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ロマネア
からりと晴れ渡った冬の日だった。
昨晩、夜通し降った雪がうっすら地面を覆っている。
商業都市ロマネア。
ノーセスト王国の東側に位置する商業が盛んな都市。
ここロマネアでは、街の中央通りで月に一度、カレア市という大規模な市場が催される。
いつもは穏やかなロマネアの街並みが、カレア市のために活気付き、大通りには様々な出店が出て、大勢の通りを行き交う人々で溢れていた。
そんな賑わいから少し離れた宿屋の並ぶ通り。その中のひとつ、こじんまりとした宿屋に、青年の姿があった。
艶やかな黒髪に深い紫の瞳。スラリと背が高く、大きなフードがついた厚手のコートに大きめのカバンと、身なりこそ旅人のものであったが、気品を感じさせる端麗な顔立ちをしている。
この青年、名をロラン・ソレルという。
「お兄さんついてるねぇ。今朝ちょうど一件キャンセルが出てね、最後の一部屋だよ。今日はどこの宿屋も予約でいっぱいだろう」
人の良さそうな女将がニコニコ笑いながらいった。
青年がカバンを床に置いてニコリと女将に笑いかける。
「ええ、助かりました。何件も断られて、今晩は野宿かと諦めかけていたところでした」
「ロマネアは初めてかい?」
「いえ、過去に2回ほど。ですが、カレア市の時期に来たのは初めてです」
銀貨を2枚、女将に手渡しながら青年が言う。
「賑やかでしょう。全国から商人が集まって、お祭りみたいになるんだよ」
「普段とはだいぶ雰囲気が違いますね」
「ーーねぇ、もう行ってもいいでしょ?」
朗らかに会話するふたりに割り込むように、少年がロランのコートの裾を掴んだ。
明るい茶色い髪をした少年だ。
歳は12、3といったところか。
身体よりも大きめのコートに身を包んだ少年は、様々な露店が並ぶ市場が珍しいのか、目に興奮の色を浮かべ、頬を紅潮させている。
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