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「なに?」
よく聞き取れなかったのか、シリルが首を傾げて見上げてくる。
「お前に魔法はまだ早いようだね。言いつけ守れるようになるまで魔法使うの禁止にしようか」
「え! それはイヤ」
シリルの反応をよそに、ロランは懐から金色の細いチェーンのブレスレットを取り出した。
ロランが作った特製のブレスレットは二種類ある。
銀色には魔法の増幅、金色には魔法を制限する効果があった。
ロランは絶望的な表情で金色のブレスレットを見つめる。あれをつけられたら一切の魔法が使えなくなる。
「ねぇ、もう魔法使わないから……」
「使わないのならこれ付けても同じでしょ?」
ふと、ロランが何かに気づき足を止めた。
シリルのコートのポケットからこぼれ落ちそうになっている赤色の物体が見えたのだ。
「それはなに?」
ロランの視線に気付いたシリルがはっとしてポケットをおさえるよりも、ロランの指が円を描くほうが早かった。ポケットがひっくり返り、中身が飛び出して地面に落ちる。シリルは慌てて拾おうと手を伸ばすが、シリルの手が触れる前に、今度はひとりでに浮かび上がり、ロランの手の中に収まった。
「これは?」
ロランの親指と人差し指に挟まれたのは丸い赤い包み紙だった。宙を泳ぐシリルの視線。
「シリル」
「……キャンディ、かな」
「どこでこれを手に入れた?」
「向こうの露店で買った」
「へぇ」
ロランの目がだんだんとすわっていく。
「世に出回っていない、俺が調合したロニ・キャンディの試作品が、いったいどこで売られていたのか、詳しく説明してもらえる?」
微笑むロラン。
嫌な汗がシリルの背中を伝った。
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