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僕たちは、また屋上いた。
描き、そして踊っていた。
「ねえ、水島くんって、踊るみたいに描くんだね?」
「踊るみたいに?ツバメこそ、空に絵を描いてるみたいに踊ってるよ」
「そう?…描いてる人を…いつも見てるから。かな…」
そう言うと、ツバメは屋上の隅まで駆けて行ってぴたりと足を止めた。
僕は危うくクロッキーペンを落としそうになった。
「描かないのー?」
大きな声でツバメが叫ぶ。
「踊らないのかよー?」
僕はそう叫び、ツバメに向かって駆け出した。
ツバメも同時に僕に向かって駆け出していた。
描くことを、踊ることを…すっかり忘れてしまった僕たちは、青空が夕焼けに染まるまで抱きしめ合った。
それからもツバメは、いつも変わらずに楽しそうに踊っていた。
校舎の階段を、黒板を、廊下に並ぶロッカーを、屋上を、西陽の差す窓をキャンパスにして。
僕も、変わらずに描いた。
踊るツバメばかりを。
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