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瞬視点
ある日、俺は透明人間になれるようになった。
どれほど近くにいても、何をしても誰にも気づかれない能力を手に入れた。
これがあれば由香にどれほど近づいてもバレないわけだ。
暇さえあれば由香の仕事の帰り際や通勤を尾行していたのだが、効率が非常に良くなった。
GPSや盗聴機、監視カメラ、隠し撮りするのも以前より格段にやりやすくなった。
俺は世で言うストーカーという奴だった。
俺は昔から幼馴染みの由香を酷く大切に大切に想っていた。
それは我ながら病的なまでに執着し、惹かれていた。
由香の言うことなす事、何事にも全肯定でいたら、当人には全く意識されなくなった。
だから然り気無く近くにいて、変な虫、馬の骨が近づかないように徹底的に守ってきた。
由香自身は全く自覚も何もなかったが、周囲からは完全に俺と付き合っていると思われていただろう。
そうなるように俺が仕向けた。
好きだったが、由香には兄妹のようにしか見られていなかったので告白をするのは無駄だと思って諦めていた。
大人になったらストーカー行為がエスカレートしていって、由香には言えない事も増えた。
そんな時に、透明人間になれる能力を俺は手に入れた。
ストーキングを極めたおかげだろうか。
一年に渡り、由香に対して使っていたが、しつこく使っていたからだろうか。
透明化能力を俺は完全にコントロールする事に成功した。
それどころか、任意の相手を消すことが出来るようになっていた。
しばらくは苦手な同期にしかけたりして遊んでいたが、ある日、俺は気づいてしまった。
由香を透明人間にしたら、誰にも奪われる事はなく、由香も俺を頼らざる得なくなって、安全に確実に由香を手に入れる事が出来るのではないか。と。
吊り橋効果よろしく、意識されてない俺でも、意識してもらえるようになるのではないか。と。
盗聴機で聞く限り、本人もよく『しんどい。』『消えたい。』『辛い。』と一人で愚痴を溢しているし、それほど辛い環境なら、休むことだって必要だろう。
由香は昔から一人で抱え込みがちで、誰にも頼らないという強い性質を持つが、それだけ傷つきやすい繊細な性格なのだから。
由香は流されやすい性格だから、酒の力も手助けして、まんまと俺の考えた『普通に考えたらおかしい策』に乗った。
由香は体が治るまで、俺の家で同居することになった。
これで第一関門は突破した。
しばらくの間は透明化して、緊張と非日常を利用して、由香と距離を縮めつつ、ほど良いところで解除してあげることにしよう。
その頃には完全に俺から逃げられないように、外堀を埋めた頃のはずだから。
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