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透明人間
私は猛烈にこの世から消えてしまいたい衝動に駆られていた。
私は毎日を社畜として日々を過ごす。
だが、これを一生繰り返すのかという不安感にしょっちゅう襲われる。
毎日の遅くまでの残業で趣味に費やす時間はほぼない。
休日は疲れて一ミリも外には出たくない。
現在一人暮らしなのでたまに実家に帰れば、最近再婚した両親の間に子も生まれたので、居場所はない。
それどころか、『由香も早くも結婚でもしたら?』なんて言われる始末。
こちとら、実の両親の不仲具合にうんざりして結婚願望はないってのに。
昔から家が近いから、小学校から高校まで一生だった同級生で幼馴染みの瞬は、
『由香ちゃんは一人でよく抱え込むけど、たまには俺に相談でもして。
悩みがあったらいつでも聞くよ。
今度、都合が良い時にでも飲みに行こう。』
と、連絡がたまに来る。
ブラックな会社に入った私と違って、瞬は優良企業で日々エリート街道を駆け上がる。
キラキラと眩しい位置にいる選ばれし存在。
昔はどっこいどっこいだったのに、どこで変化が起きたのか。
昔は小学生レベルの下ネタで笑ってた瞬は、気づくと『小綺麗で洗練されたミステリアスイケメン』みたいな位置になっていて、たまに鼻につく。
腹黒な性格が、周囲には認識されていないようだ。
幼馴染みの瞬と社畜の己の現状を比較して、劣等感から相談なんてする気も起きない。そもそも忙しくて会う余裕がない。
毎日が変化もなにもない、代わり映えしない毎日。
だから毎日『しんどい。』『消えたい。』『この世から居なくなりたい。』と常々思っていた。
でも死ぬ勇気なんてものもないから、どこまでも現状維持。
そんなある日、私は本当にこの世から消えた。
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