格子の君に恋し続ける

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 今日も、格子の君を想い続ける。 「おはよう」 「あ~……おはよ、慶」  今日も君は眠そうに挨拶を返すね、またオンラインゲームに没頭してたのかな。  すると、またひとり……。 「よー、おはよう! って、また朝から眠そうだな礼」  馬鹿みたいに元気で、太陽みたいに熱い奴。テンション高過ぎ。 「龍馬、朝から大声出さなくても……うるさい」  礼と龍馬と慶は幼馴染みの高校生三人組、小学校からずっと一緒の仲。ただ、この関係を崩そうとする者がいる、それは――だ。    正反対の性格の礼と龍馬をうまく調和させるのが慶で、二人の影にいる大人しい子。でも二人より闇深い子でもある。  二人が仲を深めれば深める程に慶の闇が大きく濃くなっていく。何故かって、それは恋という医学で解決出来ない病にかかっているから。  太陽が憎く、月を愛する、彼。  クールなインテリ眼鏡の礼が年々美青年になっていくのを横で見て、こんなの惚れない筈がないって思うの、わかる。別に熱血漢を悪くいうわけじゃないけれど、そこはやっぱり……好み?  それでも、惹かれあってしまうのが月と太陽で二人の心は止められない。それを阻止してモブな彼と月をくっつける方法はないか、いくら考えても思い付かなかった。でも諦めきれなくてずーっと頭を働かせて思いついた、虚構の中で物理的に解決するという結論に。 「礼、僕は君を愛してる、龍馬なんかよりずっとずっと愛してる、それでも君は龍馬を選ぶよね、だから君らが結ばれる前に君を――」  ドサッ  赤く染まる礼、虚ろになっていく彼の瞳、そこには僕だけが映る。 「慶! お前何してっ……礼!礼!」  駆け寄る龍馬が必死に礼君の名前を呼ぶ。それでも礼君の瞳は何も映さない、そのまま冷えた塊になる。  だって仕方がないじゃない、あんたに渡したくないんだもの。 「――どう、今回の新作?」 「先生、あの……また闇深い自分の分身入れましたね! 好みのキャラクターがすぐわかりますよ、礼君可哀想に……なんで物理的に消す方向なんですか」 「えー……敵に渡すくらいなら、消したいから。だって最期に最愛の彼の瞳に映るただひとりの人間になれるんだよ? 最高じゃない」 「だから先生は病み深作家ってネットで言われるんですよ……一部コアなファンはいるようですが」  担当泣かせって言われるけど、こればかりはしょうがない。ごめん、諦めて担当さん。  原稿用紙の中の見知らぬ君を今日も愛するのが私。
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