高校生の始まり

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「──、─き、夏輝、起きろ」 そんな父の声が聞こえ、微睡から覚めた彼は目を瞬かせながら父の方を見た。 「説明、終わったぞ。そんなに眠かったのか?まあ内容は全部資料に載ってたから教室に行ったら読み返しとけ。ほら、新入生は出口まで行けってよ」 もう終わったのか。意外と早かったし、ぐっすり寝てしまうと思っていなかった。少しすっきりした。体を伸ばしつつ父に問う。 「父さんはもう帰んの?」 「いや、保護者会があるから残る。帰りに買い物に行くが何かリクエストあるか?」 「ボルシチとケーキ食べたい。あとバゲットも」 「わかった。ケーキは俺にはさっぱりだから自分で買ってこいよ」 「うん」 そういって頭を撫でてから背中を軽く叩く父。 父に促されて出口へと足を向ける。 「じゃあまた家で」 「じゃあな」 父と別れて案内に従って教室へ向かう。 ほとんどの生徒がすでに教室に向かったはずだが、廊下では多くの生徒が友達との久々の話に花を咲かせていた。 ほとんどの者はもう一度『彼』の姿が見たいがために廊下に出ているだけである。そんなことは知らず、彼はその人ごみの中を進んでいく。 彼が進むたびにモーセの海割りのように、その類稀なる美貌の持ち主に見惚れ、知らず知らずのうちに道を開けてしまう。チラチラとそちらに視線をよこしつつも会話を繰り広げている。 何か視線を感じるけど歩きやすいように道は開けてくれるんだなとも思いつつも気にすることなく教室へと到着した。
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