手紙に掛かる思い

1/1
前へ
/1ページ
次へ
書きかけの手紙の宛名を消してみる。 私はあの人にどんな言葉を送るべきだったのだろう。 宛名をけした手紙のその部分を手でなぞる。 そこには確かに私が書いた跡が残っている。 白の便箋だったから、消したところでシャーペンでつけた黒色が伸びて、紙としても不細工な色になっている。 色鉛筆だったらそもそも消せなかった。なんて意図を考えて息が漏れる。 色鉛筆で装飾する関係なら良かったのだろうか? いやでもこの結果が変わらないなら私はもっと苦しかったかもしれない。。でも逆もあるという事を思い。わたしの今の想いに代わるモノは一つもない。でも気遣いをくれる皆んなの想いも同じものはない。 だから今の間柄で起こる事。私に向けられた全てはこの時間の賜物で、この一瞬の先は生きていくという事象がある限りココに必ずあるのだ。 だから消えるなんて事は起きない。 僕らは死んでいく事も加味していつしか生きてきた。 選択から外れた先に物語が無いわけではない。 選ばれたからといって勝るわけではない。 勝ったからといって正しい訳ではない。 そう思い宛名に私の名前を書いた。 見慣れた字。見慣れた筆跡。今はまだ私だけが知っているこの手紙。 自分の名前も消してみる。もし誰かが見たら変な思いをすると思う前に消した。私は消したかっただけだ。 この日々も私ならしたい様にする。私だから出来る事がこの頭には描けるかもしれない。それが普通という代名詞をかざしてできる事でも、私にしか思いつかないかもしれない。 この先は誰にもわからないのだ。いや知らないのだ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加