ダンジョンメシ

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ダンジョンメシ

ダンジョン探索は順調である。道行く冒険者たちも『げ、キースさん』とたまに反応してるし。やっぱりSS級冒険者として顔は知られているらしい。 しかし……。 「げ、キースさん」 「げ、キースさんだ。狩りすぎるのやめてくださいよ」 お前『げ』付けられすぎじゃないか!? 「げ、キースさん。あと誰っすか?この貧弱そうな……」 そしてたまに俺の話題になるのだが。 「殺すぞ」 「ひぃ――――っ!お助けをおおぉぉっ!!」 「いや、やめんかい!みんな、仲良く……!!!」 たまにキースさんが本気で冒険者たちの股間を殺そうとするので気が抜けない。 「全くもう……」 時にキースによる魔物の瞬殺を見学し、時にほかの冒険者たちの股間を暴虐のエロキースから救いつつ……パンフを読みすすめる。 「シュカ、下層へ向かう階段だ」 「わぁ、本当にこう言うのあるんだ!」 「ここは穴場なんだ」 「穴場?」 ただの階段では……?それともレア素材でも手に入るのだろうか。 「ほら、そこに踊り場があるだろ?」 「うん」 「だから……階段を行き来する冒険者に見つからないか常にドキドキしながら……エッチをするのに最適だ……!」 何言ってんだこのひとぉ――――。 「しないから。人通り多すぎるから」 階段を下りながら行き交う冒険者たちを見送る。 「く……やはり人通りが多すぎる……っ!100階層以上あれば人通りがまばらになるのに……!」 この男、100階層以上あるダンジョンの使用方法を確実に間違ってる……!! こうしてキースが垂れ流す煩悩と時折自慢してくる股間の隆起アピールを聞き流しながら、今度はほかと違う雰囲気のフロアに到着した。 ――――因みに今いるところは……20階層だ。 そんな20階層はまるで……。 「何これ……キャンプ?」 「ある意味な。ここは休憩をしたり、食事をとったり、ダンジョン内に宿泊する際に利用するフロアだ。ここには魔物も来ないし、出現しない。ほかの冒険者がいれば、足りない道具を交換したりもできる」 「へぇ……どこの世界のダンジョンにもこう言うところはあるんだ。俺たちも休憩するの?」 「……んー、まぁ、食事にでもすっか」 そう言えば……ダンジョン探索で歩いたから小腹が空いたかも。 レジャーシートにアウトドア調理グッズ。マジックボックスと言う便利な代物を持っているキースは、迷うことなくさくさく用意していく。 「あ……調味料が足りてねぇな……物々交換してくるから、シュカはここにいて?」 「うん、分かったよ」 お留守番中も、俺だって少しはできる。じゃーん。ふわふわパン生地の中に事前にハムやチーズなどを挟んでおいたものだ。ほかにも内側にピザソースを塗ったものや、カレーを入れてきたものもある。 キースのマジックボックスの中ならば、時間が経っても食材の時間もとまるから、傷まず便利なのだ。 さらにキースが出してくれた魔法石コンロを使う。IH……と言うよりも魔力製なのでMHクッキングコンロである。 そして両面焼きフライパンでパンを挟んで、焼く……! これ、好きなんだよなぁ。アウトドアはほとんどしなかったけど、家でやってた。ホットサンドイッチっ!しかもカレーパンやピザパンみたいなのまでできるのだ。 じゅ~~じゅ~~と順調に焼いていれば、数人がこちらにやって来た。 何だろう……?物々交換かな……? 「おい、お前見かけねぇ冒険者だな?」 「ここ、私たちの場所なんだけど。どいてくんない?」 「何も知らないで来たわけ?どこの田舎冒険者だよ」 まさかのいちゃもん付けてくるタイプのやつらかよ――――……。まぁ田舎ってか世界がまず違うけど……。どこにでも場所とりみたいなのってあるんだぁ……。 ――――と言うか、こう言う場所って予約制だったりするのか……? でも……それならキースが知らないとも思えないのだが。 「ついでに食いもんとその調理器具は置いてけよ?」 しかも強奪する気かよ。むしろそれが目当てなんじゃぁ……? 「あのな。そもそもここが予約制だなんて聞いてねぇんだけど」 「あ゛ぁ゛……っ!?ここは元々ずっと俺らが使ってるところなんだよ!」 「そうよ。だからここは開けておくのがここのダンジョンのルールなの」 「いいからどけよ!」 実力行使に出る気か……!?異世界の冒険者相手に……俺の休眠した拳が役に立つのだろうか……? 「ふぅん……?」 その時、低い、しかし聞き馴染みのある声が響く。声だけで迷惑冒険者をビクつかせるとは……やっぱり高ランク冒険者故だろうか……?
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