再びの王城へ

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再びの王城へ

――――俺たちはダンジョン探索を終え、いつものギルドに戻ってきた。 ギルドに戻れば達成報告をするのはどこの世界でも同じようで。 「よう、戻ったぞ」 「ただいま戻りました~~」 受付コーナーにいるシエルさんのもとを訪ねると……。 「げ、キースさんお帰りなさい。そしてシュカさんは普通にお帰りなさい」 普通にお帰りなさい言ってもらえるのはありがたいけど、キースは相変わらず『げっ』て言われるな!? むしろ、信愛の現れなのか?何かそんな気がしてきた~~っ! そう思えば、休憩スペースで出会った因縁つけてきた冒険者たちはともかく……最後の盗っ人冒険者たちは言わなかったな。最後のは本当の悪人だったってことかな……?まぁ、ちゃんと罰は受けることになるのだし、いいけど。 「一応調査は終えた。これその素材の一部」 キースがカウンターに魔石を置けば、シエルさんがそれを受け取り、今は入力作業中。 「あ、報告書は一週間以内に出してくださいね」 やっぱり調査任務だから?そう言うの書くんだ。 「すぐに送れる」 「何でアンタ無駄にそう言うとこ優秀なんですか」 「ほっとけ。俺は早く帰ってシュカと……エッチなことがしたい」 やっぱそれかよお前はぁっ! 「あと、捕らえた冒険者のことはこちらに報告が来てますんで、お任せください」 「そうか。そこら辺はギルドに任せる」 そう言いつつキースが半透明のモニターを出して、何か打ち込んでいることに気が付いた。 「はい、報告書できた。今送ったから」 「確認します」 マジかよ、キース!?もう終わったの!?優秀すぎないか!?原動力はエロ第一だけども……! そして終わった途端まるで手を繋ぐかのように俺の股間を目指さない! サッと股間を隠せば、何故か意味が分からないと言う顔をされたのだが、それはこちらの反応である。いや、分かるけども。分かるんだけどもやっぱりイミフである。 「さて、後はギルマスに提出すれば終わりなので、今日はもうこれで手続き終了です」 そしてシエルさんの言葉にハッと我に返る。ひぃ~~っ!ほんと、人前で恥ずかしいわぁっ!! 「さぁ~て、とっとと帰って~~」 キースが上機嫌で言いかけた時だった。 「すまん、キース。急用だ」 グレンさんに呼び止められてしまった。てか……急用って一体……? 「何だ?落ち着いてるように見えるが」 「ギルドはな。だが、急用ってのは……城からだ」 城から……っ!? 「陛下が外交から帰国されたから、シュカくんに正式に謝罪をしたいとな」 ――――帰国。つまり、国王はこの国にいなかったのだ。だからこその第2王子の暴走だろうか……? 「あの、聞いてもいいですか?」 「あぁ、もちろんだ。この国のことについても疑問なことがあれば、聞いてくれ」 「えと……その。俺、第2王子には会ったんですけど……」 これは聞いていいのだろうか……? 「第1王子のことか?あれは王太子でな。第2王子の失態のあと、陛下の代理でまずはシュカくんを呼び戻そうとしたらしい。でもキースがシュカくんを拾って、俺を介したから。俺が対応することで、陛下の帰国後改めてとなったんだ」 うん……?グレンさんを介するとそうなるってどゆこと……?うーん……この異世界ならではのギルマスの立ち位置……なんだろうか?やっぱりしっくりこないな。 「んで、いつ行くんだ?」 「今から」 グレンさんの言葉にキースの笑みが凍り付いた気がしたのだが。 ※ 国王陛下から正式な謝罪がしたいと言う申し出を受け取、やって来たのはいいものの。 まだ、緊張している。 俺はこの世界に召喚され、いらないと言われた。俺はここから捨てられたのだ。 「心配ねぇよ、シュカ。何かあれば俺が容赦なくぶっ飛ばす!」 いや、ぶっ飛ばすのはいいのだろうか。 「こら、キース。確かに第2王子がシュカくんを身勝手な理由で追い出したと聞いているが、陛下はそのようには思っていない」 有無を言わさず第2王子に追い出されちゃったから……それが国としての方針なんだと気持ちを無理矢理押し込めたけれど。 でも国王陛下は国を留守にしており、第1王子が俺を慌てて呼び戻そうとしたのは国の方針と違う何よりもの証拠だろう。 「そもそも神子を神子とするのは神の御意志。確かにあのバカ王子は愚かなことをした」 ぐ……グレンさん。第2王子をバカ呼ばわり……。いいのだろうか、俺は全く気にしないけれど。 「だが神が神子として認めるのなら、シュカは未だ神子だ。そして神子ならば圧倒的な治癒能力を持つことも事実」 俺が……まだ、神子。 「けど、俺は治癒魔法なんて……」 使ったことも、使えることも知らなかった。 「キースが毎日お元気なのもそのせいなんじゃないか?」 「……はい?」 「バカ、グレン。確かにシュカの蜜にはヒール能力を感じるが」 そうなの!?そして感じるのはあくまでも蜜の方なの!? 「俺はそれいじょうに、シュカの蜜壺も、ミルクも全部好きだ。シュカを愛でる限り、俺ぁいつだってビンビンだ……!」 どこがだよ……。 「あと、シュカは返さねぇから」 「全くお前は……神子が召喚される意味と言うのは魔物退治や災害での治癒魔法、結界、浄化支援だ」 ふむ……。俺はすぐに追い出されたから、そこら辺はよく知らなかった。 「キースはSS級である以上、見方を変えればお前自体が災害と言っても過言じゃぁない」 え……そうなの!?そう言うレベルなのぉっ!? 「だからキースのそばに置いとくのもある意味真理と言える」 そ……そうなの? 「……と、言うことでゴリ押したてあるから、安心していい」 いや、ゴリ押してあるって……王さまにかな……?グレンさんって本当に何者!? 「神子がお務めする必要のないほど、お前が魔物討伐頑張るんだもんな……?指名クエスト、入れてあるからな?」 にっこりと笑うギルマスさん……まさか、策士……!? そしてキースは……。 「うぐ……っ、嵌められた……っ」 いつも嵌めてるのは……キースの方だけどな。 そしてそうこうしているうちに、謁見の時間がやって来た。 「さて、よく来てくれた。神子シュカ、そしてSS級冒険者のキース」 謁見の間の奥の玉座に腰掛けそう告げたのは、藍色の髪にアメジストの瞳の男性……国王陛下だ。でもあれ……?誰かに似ているような……。 「此度の第2王子の失態、私からも謝罪しよう」 いや、国王陛下が謝罪って……いいの!? 家臣っぽいひとたちが慌ててるけど! 「神子シュカの処遇については、グレンの申し出通り、SS級冒険者のキースに全てを委ねよう」 そっか……俺、これからもキースと一緒にいられるんだな。キースも当たり前だと微笑んでくれる。 しかし、その時だった。 「お待ち下さい!陛下!」 声を上げたのは……なんとなく見覚えのあるローブの男だ。どこで見たんだったか……あのローブ。 「あの者は神子なのです!神子ならば神殿が預かるのが筋でしょう!?」 神殿……あ、そっか。召喚の場って、神官などが立ち合いそうだもの。あれはあの場にいた神殿のやからが着ていたローブだ。 「何だ、アイツ。俺からシュカを奪おうってぇのか?」 キースがどす黒オーラ出してる!しかし陛下が即座に凛として神官っぽい男に告げる。 「では何故、お前たちは第2王子の言うがままに神子を追い出した……?」 「それはその……神子はだいたい、10代で……」 まぁテンプレはそれだよな……? 悪かったな、アラサーで。 「しかし彼が神が遣わした神子だと言う点には代わりない。神子を勝手に追放し、神の怒りに触れたのにもかかわらず、自分たちの行いも顧みぬとはな」 陛下の言葉に、神官の男は顔を青くするばかりだ。そっか……俺は神さまとは会話したことないけど……怒られてはいたのか。 「ですが……第2王子殿下に……っ」 第2王子と共に容赦の欠片もなく追い出したのに、最後には第2王子のせいにするのか。 「関係ない。国のことは第1王子に任せていた。予期せず第2王子が先に来たとしても、第1王子の到着を待てばいい」 つまり第2王子は……本来第1王子が対応するはずだったことを、我先にと強奪した……?何のために……まさか、召喚されることの多いらしい10代の神子を狙っていたとか……?うわぁ……。 「神の怒りを買うような神官には、今後城の敷居は跨がせられんな」 「そんな……陛下っ」 陛下の言葉に神官の男はしどろもどろになる。つまり、神殿の体勢を改革しなければ城には入れないと言うことか。 「さがれ」 陛下がそう告げれば、駆け付けた近衛騎士たちに睨まれながら神官は呆気なく退散していった。 「此度のこと、ありがとうございます、兄上」 ん……?グレンさん、陛下に今何て……。 「構わんよ、こちらこそ迷惑をかけたな。キースを長らく待たせるのも悪い。今回のところは退出していい」 「はい」 ごく普通に会話をつける国王陛下とグレンさん。あの……兄弟!?てかグレンさんって王弟殿下!?王弟殿下が何故ギルマスをしているのかは謎だが……今までの妙な違和感が一気に解決した気がした。 「ほら、シュカ。帰るぞ」 ポカンとしつつもキースに声をかけられ、慌てて後に続いたのだった。
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