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邸飲み
――――さて、王城での謁見を終えた俺たちは。
ようやっと帰邸~~!
そして今回はご褒美があるのだ。
「わぁ、楽しみだなぁ~!宅飲み……いや、邸飲みか……?どっちでも楽しみ!お酒ってどこなの?」
そう、酒盛り酒盛り。
アラサーですからね。そりゃぁ異世界でも飲みますよ。……ビール欲しい。
「あぁ、早速見てみるか?こっち」
「うん……!」
キースに続いてとたとたとついて行けば……。
「地下に行くのか?」
キースが開けた扉の先には階段が下に伸びている。さらに扉を開けたとたんに明かりが灯るなんてちょっとカッコいいな。
「あぁ、地下に保管用の魔法がかけられた専用の蔵がかるんだ」
まさかの魔法保存……っ!
キースに続いて慎重に階段を降りていく。
「シュカ?」
「ん?どうかしたか?」
「……いや」
とはいいつつ、何か驚いたような顔してない?俺、何か変だったかな……?
キースの視線を追ってみると……。
「あ……っ」
何故かキースの服の裾を掴んでた!何やってんの俺~~っ!
「な……何でも……っ」
慌てて手を放し、視線をそらせば……。
「何だ?もうやめちまうのか……?」
はぅーんっ!?何でそんなセクシーボイスで言ってくんだ!!?
「それとも……先に行っちまおうか……?」
ひぅ……っ。
「ひ……ひとりでだって……行けるわぁっ!!」
「そんな脚ぷるぷるさせながら言われてもな……?」
はぐぅっ。
「ダンジョンでは平気だったろうに」
キースが俺の掌を握ってくるので、導かれるようにして一緒に降りていく。何だかんだで、結局は優しいんだよなぁ。
「いや、その……暗い……と言うか、狭いのが」
いや、閉所恐怖症ではないのだが、暗くて狭いとちょっと恐いんだよなぁ……?一応大人2人分の広さはあるものの、ダンジョンでは大勢が登りおりできるほど広かった。例えるとすれば……日本の小・中学校の階段の幅サイズ……?ダンジョンと同じく窓がないのは同じだけど、それでも閉塞感あるからなぁ。
でもキースが一緒だから大丈夫……だよね……?
そしてキースと手を繋ぎながら、無事に階段を下り終えれば……。
「シュカ」
何故かいきなりふわりと抱き締められる。
「キース!?いきなり、何で……っ」
「シュカがかわいすぎるから悪い。俺はもう限界なの」
何の限界!?しかし、首筋ですりすりと顔をすり付けてくれるのは……悪くはないよな……。
さて、キースの俺成分も補充したところで。
「うちの酒蔵。種類によって分けてあるんだ」
「うわ……広……っ」
入り口に比べて、中は広々としている。
「こっちがワイン」
「ワインもずらりと並んでるよ!?どんだけ!?」
「ほとんど実家からのお下がりだなぁ」
とは言え、一般家庭の非ではない。日本比ではあるが……一般家庭にはそもそもこんなワインセラーはないよな……?
「シュカは飲みたいのあるか?」
「あー……俺赤は苦手だから白しか」
「じゃぁここら辺っと」
キースがマジックボックスにホイホイとワインを入れていく。
わぁ……便利すぎ。
「シエルさんたちのはどうする?」
楽しみな酒盛りだが、せっかくなのでとキースに提案してみたのだ。
今日はこれからシエルさんと、それからグレンさんも誘った。
グレンさんって王弟殿下だからいいのかなと一瞬迷ったが……やっぱりフランクだし、本人も今まで通りでいいと言ってたからなぁ。
「シエルは自分で飲みたいのを勝手に取ってくるからいいよ。グレンは出してあるやつ適当に飲む」
グレンさんはともかく……。
「勝手に取ってくるの!?」
ずいぶんと自由だな……!?
「昔、うちに居候していたことがあってな。その頃からだから」
へ……?シエルさんって、ここに住んでたの……?
もしかして……妙に親しげなのって……。この胸のモヤモヤ感は一体なんだろう。
「あ……変な誤解すんなよ?アイツ隣国から越してきた時、色々あったから。俺の家で保護してたの」
ふぇ……?想像と違いすぎた解説に、思わず目を点にする。
隣国から……?シエルさんって隣国の出身だったってことかな……?それがどうしてうちの国に……。
それに保護とは?追われてでもいたのだろうか……?
「それに、アイツはアイツで相手がいるからな」
「相手……」
恋人ってことかな……?
「あと、何にする?隣はウイスキー」
「飲めるかな……?」
絶対強いじゃん。
「不安なら、俺が飲む用だけにするか」
隣の酒蔵から、キースがいくつか持ってくる。
「ほかに飲みたいのはあるか?」
「うーん……あ、そうだ!ビールはある?」
「ビールがいいのか?そういやシエルも好きだったな。ついでに持ってくか」
キースに続いて案内された部屋は……。
「冷えてるっ」
「冷えてた方がうまいだろ?」
「確かに……!」
「外に出す時も保冷魔法の札貼っとくから、ぬるくならないんだ」
「便利~~」
異世界でも冷え冷えのビールが飲めるのはありがたいなぁ。キースがビール樽を樽ごとマジックボックスに突っ込んだ。
しかも……2樽。
何故2樽ううぅっ!?
――――そして、夜。
「料理も用意できたし、お酒もグラスも用意したから……あとは」
「俺の分は?」
「え……キースの……?」
キースがマジックボックスから出してくれたお酒も、ちゃんと並べているけど。
しかしキースは俺の後ろからそっと抱き締めてきて……俺の股間に手を回し……。
「いやいや、何してんの!?」
「ここからはな、飛びっきり美味しい酒が飲めるんだ」
「出ませんけど!?」
「それともシュカは、俺のから飲みたい?」
「キースのアソコからも出ませんんんっ!」
媚液ではあるけど、お酒ではありません~~っ!
どうしたものかど思いきや、屋敷のベルが鳴った。
「ほら!キースったら!きっとシエルさんたちだよ!?早く開けなきゃ」
「いいんだよ……アイツらならちょっとくらい待たせても……」
そのためにか!?キースのちんこタイムのためにか!?
『おいこらキース!エロいことやってないで早く開けろ!!!』
ひいぃっ、グレンさん!?もれなくエロいことしてるのバレてるうううぅっ!
「ち……っ、グレンめ」
キースは渋々俺の股間から手をよけ、拘束をほどいてくれた。
「ほら、お待たせしちゃいけないから」
とたとたと玄関に向かえば、キースもついてきてくれる。
何だか名残惜しそうにはしてるけど、全くもう。ちょっと微笑ましいけどね。
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