122人が本棚に入れています
本棚に追加
酒盛り
ようこそ~と、扉を開ければ早速……。
「お待たせ、キースさん、シュカさん。これ、お土産です」
はいっと焼き鳥の入った袋を差し出してくれたのはシエルさん。
「あ、ありがとうございます!」
「俺からは酒。たくさんあるだろうが……お詫びにと兄上からもらってきた」
しれっと言ってるけどグレンさん、陛下からもらってきたの……?そんなすごいのもらっていいの……?
しかしキースはごく普通に受け取る。そして2人を邸内に通せば。
「キースさん、地下行って取って来ていい?」
「わぁった、わぁった、行って来い。あとビール樽はもう2つ運んである」
「りょーかい!それじゃ、取ってくる!」
シエルさんは慣れた様子で酒蔵へ続く階段を下っていく。やっぱり居候していただけあって、慣れてる……?
「グレンはどうすんの?」
「俺は別に……いくらか出してるんだろう?それでいい。手伝うことがあるなら……」
「いえ、グレンさんはお客さまなんですから!座っててください!」
慌てて言えば……。
「そうか……分かった」
頷き、ソファーに腰掛けてくれる。
キースに続いて俺も腰掛ければ。早速キースとグレンさんがコルクを開け始める。
「グラスはそこら辺の使って」
「あぁ」
2人とも仲良さそうだし、よく一緒に飲んだりしてるのかな?
「シュカはビールか?」
「う、うん!」
異世界でお馴染みの樽ジョッキも用意してもらったし……ビール樽には蛇口がついているので……そのまま注ぐだけ!
しかも魔法で冷え冷えなんだよなぁ。
「わーい!」
「……何か俺との時より嬉しそうじゃないか?」
「はぇ?」
何言ってんの?まさかキース、ビールに嫉妬したのか……?
そしてグレンさんがそのやり取りを聞いて吹いていた。
やがてシエルさんが帰ってきて、マジックボックスの中から大量に酒瓶を出してきたんだが……っ!?
マジックボックスを持っていることも驚きなのだが……。まさかそれ、全部飲むの!?いや、ちょっとずつだよね!?
そして……。
『カンパーイッ!!』
盃を合わせて、おのおのおつまみを摘まみながらお酒を味わう。ん、惣菜屋さんのおつまみも美味しいし、シエルさんのお土産の焼き鳥も美味しいなぁ。
そして異世界のビールも……旨い……!
「シュカさんもビール好きなんだぁ……貴族とかだと普段飲まないから」
そういやキースって貴族出身だもんな。それでも邸にあるのは……シエルさんが昔居候していた名残?
「俺は地球では庶民でしたから。てか、シュカでいいですよ?」
「じゃぁ俺もシエルで」
「はい、シエルさ……ううん、シエル」
思えばこんな風にシエルと話すのは初めてだなぁ。シエルと一緒に話しながらもぐもぐしていれば。
「しかしまぁ、こちらの方が身軽なもんだな」
と、グレンさん。身軽……とは……?
「カッカッカッ。兄ちゃんに怒られんぞー」
と、キース。兄ちゃん……?
――――ってそれ陛下ぁっ!!
「お前……『兄ちゃん』ってな……別にいいが。でも第2王子の尻拭いに引っ張り出されたからなぁ……今日はお前のところのただ酒を腹いせに飲む」
ついでに言えば、お土産の高そうなお酒……ワインもただである。
「ははは。まぁここら辺の酒は親父からだけど」
「だからこそだ」
そう言ってグレンさんが追加でお酒を注いでいた。
キースのお父さんって……貴族、だよな……?何か関係あるのかな……。
「あ、俺次はビール飲む!」
シエルが立ち上がり、ビール樽の方へ……。
「あ、俺が注ぐよ」
そう言って俺も立ち上がった時だった。
「あ……っ」
シエルがぐらりと傾いて……。
「へぁ……っ!?」
俺ごと倒れる――――っ!!?
「おい……っ!」
いや、何かキースがすごわざで俺の背を支えてくれたのだが。
「こら、シエル。受け同士だからって」
あ、シエル、受けなんだ……なんとなく思ってはいたものの。
グレンさんがシエルをがばりと引き剥がす。
「んえぇ……?」
シエル酔ってない!?
いや、確実に酔ってるよね……っ!?
「あ、グレンの雄っぱい……」
しかもグレンさんの雄っぱい揉み始めたし……っ!
「いや、その……さすがにあれは」
「何だ、シュカ。お前もやりたいのか……?いいぞ」
いや、そう言う意味じゃないわぁっ!キースぅっ!!
「あー……とにかくシエルは大人しくこっちに来なさい」
「んー……」
でも一応グレンさんの言うことは聞くんだ。上司……だから……?
いや、でもソファーに腰掛けたらグレンさんの膝に頭乗っけて寝始めたんだけど!?
いや……上司と部下……まさか……上司と部下びーぇ……っ。
「シュカ、唇にやけてっけど、お前も酔ったのか?」
「ち、違うからぁ……っ!!!」
ヤバい、夢中になりすぎて頬が緩んでたぁっ!!でもその緩みも一瞬で覚めた。
「あの、キース」
「ん?」
「あそこに空いた酒瓶が大量にあるんだけど」
あれってシエルが持ってきたお酒……と、キースが選んだのも……。
「いつものことだ」
「いつものことおおぉっ!?」
「大丈夫大丈夫、部屋は空いてるから勝手に使っていいぞ」
「それは助かる」
そしてキースが告げれば、グレンさんがいつものこととばかりに頷いた。
あの……もしかしてグレンさんとシエル……同じ部屋に……いやいや、ベッドは2つかもしれないもんね!?
「さーて、片付け片付け!」
「シュカぁ、俺、まだここの飲んでなーい」
キースがさも当たり前のように股間をおさわりしてくるんだが。
「いや、キースも酔ってんの?」
いつも通りな気もしなくもないのだが。
何だか微笑ましくなってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!