公爵家での晩餐

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公爵家での晩餐

その夜は、公爵邸での晩餐に参加することになった。 俺は貴族のお屋敷で食事をとるような礼服を持ち合わせてはいなかったのだが、イザベルさんが是非使ってと貸してくれたスーツに身を包んでいる。 「でも、ありがたいかも」 服を貸してもらえるなんて。 「……ったく、ここまで準備済みかよ」 キースは不満げに口を尖らせてはいたものの。 「でも、キースのスーツ姿もいつもと雰囲気が違って……その、似合ってるよ……?」 元々の目鼻立ちが整っているからだろうか。いつもの冒険者装とはまた違って、その……カッコいい……かも。 「……ふぅん?惚れ直したか……?」 一瞬、ドキッとしてしまった。んもぅ……。 「キースはいつもカッコいいでしょ?」 だから、多分惚れ直すまでもなく、今も惚れてる……んだと思う。 「……シュカ」 すると、キースがおもむろに抱き締めてくる。 そして俺の耳元に自身の唇をそっと寄せれば、耳元で甘い声で囁いてくる。 「シュカもいつも食べちまいたいほど……かわいいぞ」 びっくーんっ!!?ちょ……っ、な、耳まで赤くなりそうなことを……っ。 「シュカ……、ん……っ。かわいい」 しかも耳嘗めながら、妖艶に囁いてくるんだもん……っ!これはさすがに、ドキドキしないほうが無理だって……! キースの耳責めにたじたじになっていれば、こちらに向かってくるシャロンくんと目が合ってしまった。 「ちょ……っ、キース!シャロンくんが……っ」 「こら……シュカ。いい雰囲気なんだから、ほかの男の名前出すなよ」 いや、ほかの男ってかキースの異母弟でしょうがっ!そりゃまぁ同じ攻めだけども! 「ほら、シュカ……悪いことしたんだから、お仕置きだ」 そう、相変わらず甘ったるい声で囁いてきたキース。え……お、お仕置き……っ!? 何されんの!?こんなところで……っ!? そして次の瞬間、ガチリ、とキースの歯が俺の耳を甘噛みしてきたのだ。 「ひぁあんっ!?」 「……なるほど、勉強になります。兄さま」 いやいや、待って。シャロンくんは何の勉強してんの!?どっかで使う気かな……!?このキースの手管! 「ふん……勉強にするのはいいが、シュカのかわいい顔と声は俺のもんなんだから、あまり近くで聞くな」 何つー会話してんの、この兄弟は。 「そこら辺は結界張っといてください」 そしてシャロンくんはマジで現実的いいぃっ!それでも結界で視覚をシャットダウンしないのは何かな!?見せつけてんのかな、このエロキースは……っ! 「ほら、もう父上と母上が来ますから」 しかしシャロンくんの言葉に、キースが渋々抱擁を解いてくれる。 「シュカは俺の隣に座んな」 「う、うん」 キースに促され、キースの隣に腰かける。 「そうだ、食事のマナーとかって……」 日本とは違って、多分本格的なフレンチとかイタリアンみたいなのじゃないのか……?こちらって。 「俺の真似しとけばいいから」 「うん、それなら」 安心である。本来キースは公爵家の長男なんだもんな。 それからシャロンくんも席につき、公爵さまとイザベルさんがやって来て席について……晩餐会がスタートした。 俺はキースの手元を見逃さないように必死だが、それを分かっているのか、キースもわざわざゆっくりと手元を動かしているのが分かって、ちょっと嬉しくなる。 だから会話にまで意識が行っていなかったのだが、キースの大きな声にハッとする。 「聞いてねぇっ!」 はい……っ!?何がどうなって……? こてんと首を傾げれば、イザベルさんが気を遣って教えてくれる。 「明日は国王陛下主催の夜会が開かれるの。そこに、キースさんとシュカちゃんが招待されているから、出席してねって話」 え……こ、国王陛下主催の夜会……!?な、何で……っ!?驚いてキースを見れば。 「何で……俺ぁ行かねぇぞ。もちろんシュカもだ」 「キース、これは決定事項だ。これは国王陛下からのお詫びの気持ちでもあるのだ。シュカくんと出席しなさい、キース」 公爵さまが冷静にキースに述べれば。 「詫びのつもりならんなもんに招待すんなよ、それが俺たちへの一番の詫びだろ」 うん、まぁ俺もそう言うのはよく分からないし。 「しかし招待状が来てしまった以上、断れば公爵家の面子に関わる」 「あと、シュカちゃんのためにかわいい衣装も用意してるんだから!キースさん!」 「ぜってぇそっちが目的だろうが」 キースが悪態をつくが、しかし……目を輝かせているイザベルさんを悲しませるのも心が痛む。今日のスーツだって貸してもらったのだし。 「……けど、その……」 「シュカ……?」 「第2王子は……」 夜会に出席するのだろうか……?国王陛下はまともそうだったし……謹慎とかさせられてるかな……? 「謹慎は解かれるそうだ」 公爵さまの言葉にドキリとする。やはり謹慎させられていたのか。そして追放時以来の再会になるのか。 「だが、国王陛下や王太子殿下の手前、妙なことは出来ぬだろう。王弟殿下も来られるようだし」 グレンさんも来てくれるなら安心か。 「もちろん俺もいるんだから、シュカに手は出させねぇ」 俺の考えを読んだのか、キースが告げてくる。 「そうそう、もしも接触して何かやらかしたときは……手は打ってあるからね」 そう、シャロンくんがにこりと微笑みながら教えてくれる。うん……?なんだか妙に笑顔な気もするが……少なくとも、味方はたくさんいるのだから……大丈夫だよね。 「とりま、安心しとけ」 「うん」 それから最後にはデザートも出たので、明日に向けた気合いも込めて美味しくいただいたのであった。
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