130人が本棚に入れています
本棚に追加
冒険者登録
冒険者ギルドの中は再び賑やかな喧騒を取り戻していた。こう言うの見ると、やっぱり異世界だなってよく分かる。
「それでさ、キース。今日はこれからどうするの?買い物して帰る?」
「あー……その前にだな。いっちょ登録に行くぞ!」
「登録……?何の……?」
また新しいクエストだろうか……?
「何って冒険者登録だろう」
「でもキースはもう登録してるのでは……」
「俺んじゃねぇよ。シュカのだ」
「え……俺!?いや、俺はその、対して役に立たないって!」
「問題ねぇよ。戦力だけが全てじゃねぇし。冒険者の登録試験はあるけど、よほどの虚弱体質や年齢的に年少でもなきゃ、落とされることはほとんどねぇよ。ついでに試験はギルド職員や先輩冒険者が請け負うんだ」
「そんなのがあるんだ……俺、大丈夫かな?筋力……パンチ力……いろいろと心配なんだが」
明日筋肉痛にならないよな?
「戦闘スキルが全てじゃねぇよ。ヒーラーやらバフ系担当の付与魔法使いとかデバフ特化の呪術魔法使いもいるし」
ヒーラー……か。捨てられた神子にもヒーラーっぽい特製とかあるんだろうか……?
あと、付与魔法使いはともかく、呪術……?呪術って魔法に換算されんの、この世界!?呪術と聞くと……ちょっと恐そうなんだが……?
「登録に対しても許可はとってあるからな」
許可……?うーん……異世界人だからってことかな?
「それに、身分証はあった方が困らねぇよ」
「それは確かに」
今ではキースの夫と言う立場だが、日本で言うような運転免許証やマイナンバーカードみたいな身分証は持っていない。ステータス画面なら出せるけれど、毎回それを開いて見せるのは……ぶっちゃけレベルとかも書いてあるし気になるのだ。
「そんじゃー、こっちな」
「う……うん!」
キースに手招きされて、よくある異世界の受付カウンターのような場所にやって来た。
そしてキースが迷わず向かった先には……先客がいるのか……?
おとなしく順番を待とうと思っていれば、その人物が不意に振り向く。
藍色の髪にアメジストの瞳の男性で、年齢はキースよりも少し上といったところだろうか?
「来たか、キース。こちらだ」
「おう、グレン」
グレンさんって言うのか。どうやらグレンさんは俺たちを待っていてくれたみたいだ。
「シュカ、コイツがギルマスのグレン。グレン、シュカだ」
「そうか、よろしくな、シュカくん」
めちゃくちゃ笑顔を向けてくれたグレンさんだが、え……ギルマス!?キースたらコイツ呼ばわりしてるけど、異世界ファンタジーに於いては結構な立ち位置にいる方では!?
「よ……よろしくお願いします……!」
あ、挨拶はするけど!
「ま、ギルマスの許可が出たなら、登録作業をしましょうか」
そしてさらに受付カウンターの向こうから声をかけてくれたのは……あ、さっきの声の……!
その青年はだいたい30歳くらいで、茶髪に空色の瞳をしている。
冒険者ギルドの受付はギルド嬢……と言う勝手なイメージがあったのだが、思えば女性ばかりなはずはないよな……?男性の受付スタッフもいるはずだ。
「えーと、まず冒険者ギルドへの登録についての説明は……キースさん、してます?」
「何で俺がすんの?めんどくせぇ」
き……キースったら!
「はいはい、分かってますよ。アンタが四六時中エロいことにしか興味ないのは!寝ても覚めても話題はエロス!春画!大人のオモチャッ!」
あー……うん、それはすごく分かるかも。てか……どうしてそこまで知ってるのかな……?仲良し……?でもそれにしては……寝ても覚めてもって比喩……だよな?
「たりめぇだっ!シエル!」
受付さんはシエルさんと言うらしい。でも何と言うか……伴侶としてちょっと申し訳なく思えて来たな。
「全く……でも、仕事ですからね。俺が健全に解説します」
それはそれでとてもありがたいのが複雑。
「まず冒険者のランクですが、一番下のFから最高ランクがSSです。シュカさんは新人なので、とちろんFランクからスタートです」
「はい、それはもちろん」
因みに俺は若かりし頃のヤンキー経験しかないので、よくあるチート主人公のような飛び級はできないだろう。地道にコツコツとってとこか。
「ついでにキースは何ランクなのか聞いていい?」
やっぱり夫夫だし、気になるよね。さすがにFではないだろうけど。
「SS」
……はい……?
「あの……冗談では……」
ちらりとシエルさんを見やる。
「残念ながら事実です」
「いや、残念って……」
シエルさんの言葉に、グレンさんがツッコむものの、苦笑していた。
「おい、何だよお前ら~~」
キースは口を尖らせつつも、楽しそうだな……。
「それで、キースさん。因みに実技は?」
「俺がみる」
「だと思ってました。あと承認待ちのランク昇格試験官の件はどうです?」
キースったら、試験官まで務めてるの……っ!?さすがは最高ランク!
「お前やればいいじゃん」
「俺はギルド職員の仕事があんのぉ……っ!」
「そうだって、キース。シエルさんだって、ギルド職員のお仕事だって大事なんだから」
「シュカとの交尾の方が大事じゃん……?」
真顔――――っ!!!つか交尾って!言い方が何かエロいんだよ節々で!
しかしシエルさんは慣れたものなのか、さくさくと書類を作って、カードの発行手続きに移る。
「それじゃ、シュカは実技試験だ。ギルドの演習場行くぞ」
「俺もついていこう」
えっと、グレンさんも?とは言え俺はチート主人公みたいにすごいところなんてないのだが。ギルマス直々にって普通では……多分ないよな?
最初のコメントを投稿しよう!