実技試験

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実技試験

――――演習場。 「さぁーて、シュカ、どこからでも安心してかかってこい。俺が組み敷いてやる」 ドッターンッ!それは安心できるのか……!?て、結局ヤる気満々じゃねぇか……っ!!グレンさんもいるのに何を言って……あぁ、グレンさんが完全に遠い目をしているううぅっ! 「い、いいから、行くぞ!試験なんだから!」 「ん?あぁ、構わねぇよ……?」 ヤンキーやっててっぺんと天下とってから10年ぶりくらいの拳は……果たして……っ! 「えいっ!」 最初は軽めに右ストレートパンチを出してみるが。 ぱしゅっ 軽々しく手首を掴まれたと思えば、次の瞬間、ぐいっと身体を引き寄せられる……っ! 「……わ……っ!?」 「何……?誘ってんの?」 「ち、ちが……っ」 しかし、右手首はしっかりと掴まれている上に、もう片方の腕で腰を引き寄せられるううぅっ! 「ちょ……っ、やめ……っ」 こんなところでええぇっ!しかし次の瞬間パッと股間の圧が離れる。 「え?」 何故……?何だかキースらしく……ない……? 「何だ……?寂しいか……?」 ニヤリと口角を上げるキース。 はぅあぁぁぁっ!?まさか……そう言うことか……!?すっかりキースの股間(ざみ)しくなってるのを自覚させる気かあぁぁぁぁっ!!? 「つ……次は本気でヤっからな……っ!?」 何故かその瞬間……ほんと何故か、若かりし頃のヤンキー魂が蘇って来た気がする~~っ! ほんと何で――――っ!? だが……これだけは譲れない……。 「うおらあぁぁぁぁ――――――――っ!歯ァ食いしばれえええぇぇ――――――――いっ!」 俺の股間を寂しく感じるようにした罪、贖ってもらうぞおぉぉぉ――――――――っ!!! ぱしゅっ 「……あ」 何か、拳がいとも簡単にキースの掌に吸い込まれていったんだが!?そして全くダメージ通ってない……っ! やはりブランクか……ブランクのせいなのか!?それともキースが超人的冒険者なだけえぇぇっ!? そして俺の耳元に口を近付け、囁く。 「歯ぁ食いしばるより……舌出して喘いで?」 青いお空の下で何いってんのおおぉっ! 「ふふ……っ、かわいいな……?シュカ」 「んもぅ、バカッ!」 「はははははっ」 からかってるのか……本気なのか、よく分からないけど……やる時は……やるからな、この男。 「それで、実技はそれで終わりか?」 冷静に響いた声に、固まる。 こ……ここにはグレンさんもいるのに~~っ! 「お前のエロさはいつものことだが」 いつものことなのかよ、キース。 最高ランク冒険者がエロエロだよ。 「神子特有の力については見ないのか?」 え……グレンさん……今何て……。 「シュカは魔法使わねぇよ、今んとこ。必要なら教えるけど」 キースがごく普通に述べるが……しかし。 「あの……俺が神子って……」 「直近の召喚履歴と名前で判明したが?そうでなくては、城に報告もできないし、それゆえに婚姻やギルド登録に関しても色々とな」 俺の婚姻……そう言われれば……そうなのか……?俺は召喚者だから、元々この国に戸籍はないはず。捨てられた以上は用意してあるとは限らない。 婚姻するためには戸籍も必要だろうし……。 「あの……俺っ」 城からは捨てられたものの……何か言われたりとかは……。 「心配しなくても、シュカくんはこの国の最高ランク冒険者であるキースが伴侶に望んだのだ。召喚に関しては色々と聞いたが、城サイドとしても色々と謝りたいと言う気持ちもあるらしい」 えっと……謝りたい……?一方的に捨てられたのに、どうしてまたそんな……。 「城からの謝罪要請を今後受けるかどうかは、キースと話し合うといい。だが、城サイドは君の意思を十分に尊重すると言っている」 「俺の意思……ですか?」 「だからこそ婚姻も、冒険者登録も問題なく認められた」 城サイドとしても申し訳ないと言う考えに至ったのだろうか。それとも、俺を追い出した第2王子の命令だけが全てじゃないということか……。思えば、その上にも第1王子と王さまがいるはずだし。 そして俺の婚姻や冒険者登録の許可を取りに行ってくれたキースは……。 「キース、知ってたの?俺が……捨てられた神子だって」 「ん?それが?分かったところでシュカが俺の番ってことには変わりねぇんだから、関係ねぇだろ?」 キースはそう余裕たっぷりに笑う。 「ただ、シュカとの夫夫(ふうふ)生活の邪魔になんなら徹底的に抗うまでだ」 ニヤリと笑いつつも……目が本気……? 「でも、さすがに国は……」 「沈められたらたまったもんじゃないから、取り敢えず俺は通せ」 いや、沈めるって……比喩だよね!? でも……グレンさんを通すってのは……ギルマスが国にとっても重要なポジションってことかな……?何か引っ掛かるのだけど。 だがその後シエルさんから、キースの指導つきならと無事に冒険者カードを受け取ることができたので、よしとしよう。
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