ワンナイトラブ

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ワンナイトラブ

――――こう言う理不尽もまぁ……テンプレっちゃテンプレだよなぁ……? この異世界に神子として召喚されながらも、アラサーだからと言う理由で、問答無用だと王宮を追い出されたのだ。 確かに日本人にありがちな黒髪黒目、童顔とは言えアラサー。若者とは違うし、見目麗しい美少年のようでもない。むしろ顔立ちは平凡だ。 しかし……アラサーで何が悪い。呼んだのはそちらだろうに。神子に年齢制限があるのなら、召喚する時にも年齢制限かけておけよと思う。 しかしその怒りよりも深刻なのが……。俺、無一文。 言葉だけは通じるのが救いだが……この世界での生き延びる方法も分からない。飯は?住まいは。今夜、どこで寝ればいい? まさかこのまま野垂れ死に?それとも魔物とかに 襲われたり……いやいや、ここ王都だし。 しかし、王宮を追い出された以上は帰るわけにもいかない。 どうしようかと決めあぐねて、とぼとぼと王都を彷徨っていた時のことだった。 「お前……俺とエッチしねぇか?」 な……ナンパ!? つーかナンパにしては直球すぎないか……っ!? でも……タイプ。 ダークブラウンの髪に、鋭いけれど妙にこの心を揺さぶる金色の眼差し。 顔立ちは驚くほどにキレイで整っている。 これは……顔が、タイプ……っ! 顔立ちが整っていればいいわけではない。イケメンだって靡かないときは靡かない。タイプじゃなければお断りである。 しかしこの男……髪の色、目の色形、顔立ちからうっすらと浮かべる笑みまでも……ドンピシャ。 いやいや、しかしこんなナンパ男だ。実は中身最低だなんて可能性もある。 しかし自分がそうそうナンパされるような見目麗しい美青年じゃないししかも若くもないことを知っている。 たとえ罠だとしても……。こんなわけの分からない異世界で野垂れ死にするくらいならいっそのこと……。顔がタイプの男にでも抱かれておくべきか……? それに、あれよこれよと甘い謳い文句引っ提げてくる奴らに比べたら……その直球すぎるお誘いに賭けてみてもいいのではないだろうか? 重要なことなので繰り返すが……顔はタイプなのだし。 ――――だが、ただとは言えない。この男に捕まって生きていられるかは分からないが、ひとまず反応を見て、どういう男なのかを確認してもいいはずだ。 「あの、それは構いませんけどお金がないのでエッチしたらお金ください」 やっぱりこう言うのはただで……とはいくまい。俺の後ろを差し出すのである。少しくらいはもらってもいいのではないだろうか? いや、これはいわゆる身売り……いやいや、生きていくために、稼ぐ手立て!右も左も分からない異世界で、金もない、何も分からない!そんな状態でのまたとない千載一遇のチャンスである! ――――そして男の反応は、いかに。 ごくり。 「へぇ?なかなか乗り気だな?いいだろう。白金貨3枚でいいか?」 な……何……っ、だと!?まさかの乗ってきた!そして金額の提示!この異世界では、こう言うのは違法ではないのだろうか……?しかしこんなチャンスをみすみす逃すわけにもいくまい……! 「白金貨……6枚で」 白金貨の価値は知らないが……と言うより貨幣価値すら知らないが、ないよりはあった方がましだろう。さて、どうでるか……? 「いきなり2倍か……ふん。報酬のアップはお前の抱き心地次第だ」 な……なぬ……っ。俺の抱き心地……そんなの分からないが、しかしこの男とやることには変わりない。 「……が……がんばる……」 俺はこの男に抱かれる側。この男を抱けと言われても自信はないが、しかし予定どおり顔が好みのこの男に無事に抱かれることができるらしい。しかも報酬付きだ! 「じゃぁ、行こうぜ。名前は?」 男がフランクに問うてくる。 「しゅ……シュカです。あなたは?」 ナンパ師と、お金もらうために抱かれる側はそう言うものだろうか……? 「キース」 「キースね。あ、言っとくけど……ちゃんとした場所で抱けよ?」 そこら辺の路地とかは勘弁してくれ。王都は整備されているようではあるが……さすがに固いだろう……? 「心配するな。家はなかなかいい感じだ」 「いい感じ……?」 家でしてくれるのは何よりである。屋根があるだけでもありがたい。 そう、思っていたのだが。もしかしてと思いつつも付いていき、絶句した。 な、なにこれ……っ!?豪邸っ!!?異世界ファンタジーとかに出てくる貴族のお屋敷風では……!?この男……いや、キースは何者だ? 「あの……ここは?」 まさな娼館?百歩譲って異世界の……ラブホ? 「俺の家」 「やっぱ貴族か何か!?」 こんな豪邸に住んでいるとか何者だよ!? 「さっきから思ってたけど、俺のこと知らねぇの?」 ゆ……有名人なのか……?しかし、召喚されたばかりの俺は……。 「知らないけど……まさかとんでもないクズ男なのか?」 「本人に聞くか?そこ」 「うん、参考までに」 「……これでも俺に抱かれて気持ちよく()がらなかったやつぁ……いねぇぞ?」 たいした自信だな!?そしてこの色気よ……っ! 「ぜ、絶倫……?」 まさかこやつ……ただのナンパ師では……ない!? 「それ以上を確約してやろう」 キースが向ける不敵な笑みにドキッと来てしまう……! ぜ……絶倫以上ってどないやねんっ!!? 「俺、初めてなんだけど」 俺の腰……大丈夫だろうか……? 「構いやしねぇよ……気持ちよくしてやるから……な?」 ふぐぅ……っ!顔だけはタイプなのが憎い――――っ!!ドッキドキキュンキュンしちゃうんですけどぉ~~っ!? 「ほら、入んな」 「は……はい……」 「靴は脱いで」 「うん……っ」 西洋ファンタジー風なら、靴は履いたままだと思いきや、意外にも脱ぐのか。ちゃんとエントランスホールがあり、屋敷の中へ続く扉で区切られている。しかし……広いエントランスだな……?靴100足くらいは置けそう……。 そしてキースが開けた扉から、中へと招かれる。中は広々としており、リビングには存分に寛げるようなソファーや横になれるようなスペースまである。 「あの……ほかのおうちのひとは……」 ひと気がないが、出掛けているのだろうか? 「俺一人暮らしだけど」 「ひとりぃっ!?」 こんな豪邸に!? 「寂しく……ないの……?」 恐る恐る問うてみれば。 「だからこうして招いてんだろ?」 あ……そう言うこと。 「シャワー入って来な。これタオルとバスローブ」 用意がいいな。やっぱりいつものことで慣れてる……んだよね。ちょっぴり寂しさを覚えてしまったのは、気のせいだろうか。いや、とにかく今はシャワー……。 試しに湯殿を覗いてみれば……広い。 温泉旅館の大浴場みたいなスケールじゃん。 一人暮らしだって言う割には、洗い場が複数並んでいるし、奥の湯船なんて、何十人入れるんだよってレベルなのに……湯まで張ってある。 いやさすがにあちらに入るのは……違うな。 よし、まずはシャワーを……と、思ってシャワーに近付いたら。 「……」 わ、わっかんね――――……。 「このボタンか?」 ボタンがいくつか付いているのを押せば。 「つめたっ」 これじゃないっ! 隣のは……。 「あぁ、お湯だ」 しかし次にシャンプーとボディーソープはどうすればいいんだろう。 文字……読めないんだよなぁ。適当に使うか。 ――――髪がパサパサになってしまったので……間違えてボディーソープをつけてしまったようだ。くうぅっ! もちろんつけ直しましたとも!抱き心地……に影響するかどうかは分からないが……しかしお金のため、少しでも身綺麗にすれば、キースの気分も上がるだろうか……? そうしてシャワーから上がり、タオルで身体を拭き……ガウンを羽織る。このガウンもものすごい着心地……ふわふわで、汗をよく吸収するのに、それでまさらさらのもふ心地。 この屋敷からしてもそうだけど……やっぱりキースって金持ち……?
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