悪の秘密結社

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悪の秘密結社

 ここは悪の秘密結社『ギルディア』の黒幕(フィクサー)ベガの屋敷だ。切り立った断崖の上に建っていた。  荘厳なたたずまいだ。すでに漆黒の闇が辺りを閉ざしていた。  瀟洒な西洋風の邸宅で見る者を圧倒するようだ。寝室には妖しく艶めかしい音楽がBGMで掛かっていた。  濃厚な香水だろうか。目眩(めまい)がしそうなほど(かぐ)わしい匂いだ。  イケメンで側近の星優真は甘美で媚薬のような香りに昂奮を隠しきれない。  ベガの後妻、ハニーは楽しそうに元カレを呼び寄せ誘惑していた。  寝室のベッドの上に寝転がせ、星優真を(もてあそ)ぶつもりなのだろうか。  二人は高校の同級生で、当然のことだが年齢は同じだ。高校時代、二人は密かに付き合っていた。  同級生のはずなのに、黒幕(フィクサー)ベガの後妻のハニーの方が遥かに大人びて見えた。一見すると人気のキャバ嬢に翻弄される初心(うぶ)な少年みたいな関係だ。  やはり、くぐり抜けた修羅場が違うのだろう。 「フフッ、ポチは愛する妹さんのために借金して秘密結社へ身を投じたんでしょ」 「いやァポチじゃないですけど。まァ、そうですね。ボクたち兄妹(きょうだい)父親(チチ)母親(ハハ)も早くに亡くしたので兄であるボクがあの()の面倒みないと」  借金のためとは言え、まさか黒幕(フィクサー)の側近になろうとは思わなかった。 「フフゥン、ポチがカレの側近なら安心よ。マジメで律義ですものね。ポチは!」  美貌の人妻は、今にもキスをしそうなほど唇を近づけた。 「いやァボクなんて……」  なんとか距離を保とうと星はベッドの上で後退りした。  いくら腹心の部下だと言っても首領の後妻に手を出せば、ただでは済まないだろう。  しかし元彼女(もとカノ)とは言えこんな妖しい美女に迫られたら、初心(うぶ)な少年も誘惑に負けそうだ。 「私もね。あの旦那(ヒト)に助けられたのよ」 「えッ、閣下にですか?」
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