変な虫が

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変な虫が

『ううゥむ、ハニー。新しく買ったトイレットペーパーはストック用の棚に置いておいたよ』  ゆっくりと首領はベッドに近づいていった。ベッドの下に隠れた星優真には首領の足元だけが見えた。 「ふぅん、ダブルでしょうね?」  ハニーは少し乱れた格好で訊いた。ヨガのポーズなのだろう。変わった格好だ。 『ああァッ、もちろんダブルだよ。それから頼むよ。ジャスティンとの戦闘中に連絡しないでくれないか』  首領も表情を曇らせ視線を逸らした。 「ああァら、なによ。パパがいつでも連絡して来いって言ったんじゃん』  ハニーはふて腐れたようにそっぽを向いた。 『いやいや、そりゃァ戦闘中じゃなければの話しじゃよ。戦闘中は部下たちの手前、マズいんじゃァ』  おもむろに首領はベッドサイドに腰を下ろした。ちょうど隠れている(ホシ)優真の真上だ。かすかにギシッと(きし)んだ。 「ふぅん……」しかしハニーは唇を尖らせて納得できない様子だ。 『実は、ここだけの話し。娘のアンジェラに変な虫がついたんじゃ』 「え、変な虫って。なによ。彼氏のこと?」 『ううゥむ、ああァ』  首領は力なくため息をつきうなだれた。 「そりゃァアンジェラちゃんだって、お年頃だし彼氏の五人や十人はいるんじゃないの?」 『いやァまだアンジェラには彼氏なんて早すぎる。それも寄りにもよって……』  父親の首領も忸怩(じくじ)たる思いだ。 「え、寄りによって、いったい誰なの?」 『ぬううゥ、それが』  首領も歯切れが悪い。 「まさか。ポチなの?」  ハニーは邪推した。 「うッうゥ……!」  彼女の言葉にベッドの下に隠れた星優真はギクッとして呻いた。 『ポチィ?』首領も眉をひそめて聞き返した。 「フフゥン、ほらァポチって結構イケメンで優しいでしょ。アンジェラちゃんの好みのタイプじゃないかしら?」 『いやいや、ポチではないよ。もしポチだったら生かしてはおかないしなァ』  首領は拳を握りしめた。 「うッ!」  ベッド下の星優真は気が気ではない。
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