タイトル未定

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タイトル未定

「最近よくコイツとシフト合うなぁ」 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺は柳葉しんじ(やなぎばしんじ)。 26歳独身男。 彼女はもうかれこれ5年くらい居ない。 5年前、友達の紹介で付き合った美人の彼女がいた。 結婚の話までちらほら出てたが、お互いの両親の挨拶をする前に別れた。 原因は彼女の浮気だ。 元々男女分け隔てなく誰にでも優しくてお人好しな性格が悪い方向にいってしまった。 美人で性格良すぎたらだいたい人間はハイエナ男達の餌食になるだろうから、しっかり離さないようにすることだとか気をつけるようにとか、前持って友人から釘をさされていたから、まぁ、こうなるだろうと一応予想はしていたがなるべく考えないようにしていた。 彼女と別れてからしばらく立ち直れなかった。 友人との遊びの予定を沢山入れたり、仕事を今まで以上に集中して頑張ったり、趣味のゲームに没頭したりする毎日を過ごして、彼女と過ごした毎日を一生懸命に忘れようとしていた。 そんな毎日を続けていたら、いつの間にか、友人や仕事や趣味をする時間の方が楽しくなってしまい、彼女と過ごした時間をすっかり忘れてしまっていた ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺の仕事は販売業だ。 まぁ、単刀直入に言うとコンビニ店員だから接客もするんだが……、コンビニ店員の仕事は販売業といえばいいか接客業といえばいいか今だに分かっていない。 そんなこと、今の俺にとってはどうでもいいのだ。 俺は店長でもオーナーでもない、ただのコンビニ店員なんだから。 サラリーマンでいうところの平社員といった所か。 コンビニ店員だからと言って下に見るな。 24時間開いていて、いつでもどんな時でもどんな時間でも便利なコンビニで買い物できるのは、店員がいるからなんだからな。 コンビニに店員がいなきゃ買い物も出来ないし、店員がいない状況で客がレジを通さずに商品を持ち帰ったら、それはそれで大変な問題になる。 ごめんなさいのひとことだけじゃ済まされない。 だからコンビニ店員は非常に大切な存在なのである。 いま俺は、シフト表を見てる。 最近やけに俺とシフトが合うやつがいる。 シフト考えるのは上の者だし、それぞれの経験値や仕事としての相性、そしてそれぞれの休み希望やシフト希望も合わせて色々と考えてシフトを決めるから、シフト考える方も大変だな。 それは分かるけどさぁ…。 きっと、たまたまなんだろうけど、いや、たまたまに違いないんだろうけど、どうしてこうなるんだよ!? 「最近やけにコイツとシフトが合うなぁ」 そうつぶやいた俺の独り言を聞き逃さず、見事にキャッチしたやつがいた。 そう、この店のオーナーだ。 シフトを作っている、張本人だ。 いつも余裕ある態度でなんも考えてなさそうに見えるが、俺の何気ない独り言も聞き逃さずすぐさまキャッチできるほど、実はしっかり色々と考えてるのだった。 オーナーの名前は田中チヨという女性。 名前がカタカナなのは親が赤ちゃんの名前を市役所に提出する締切の期限ぎりぎりになっても読み方だけ決まってて漢字だけが決まらなくて、悩みに悩んだ末に漢字が決まらないからせめて申し訳ないけどという気持ちでカタカナになってしまったらしい。 いつか忘れたけどオーナー本人が笑いながら俺に話してくれた。 しかもこのオーナー…、なんと37歳という、若くしてやり手オーナーだ。 俺の事を苗字で呼んだり名前で呼んだり、あるいはフルネームで呼んだりするなんだか変なやつ。 俺に限らず誰に対してもそうなんだが、そうする態度は時に人をイラつかせる事もあるということをいい加減覚えて欲しい。 本人は特に意味がなくそのような事をしているらしいけど。 観察した結果、どんな場面でどんな呼び方をしているなんてどんな時でもランダムで分からなかった。 だから本当に本人は意味がなくそのような事をしているみたいだ。 「オーナーさぁ、名前の呼び方に一貫性がないよね。」と誰かが誰かに愚痴を言って居たのを俺はたまたま聞いてしまったぞ。 まぁ俺は、意思疎通ができたらそれでいい、なんと呼ばれようともそれでいいんだが……。 そろそろ俺以外のやつから直接文句言われてもっと反感買われてもいい加減おかしくない気がする……。 「なに、柳葉しんじ君。不満でもあるの?」俺の何気ない独り言に対してオーナーがにやりと目を細めて笑って言った。 「いや、不満では無いっすけど……」俺はシフト表を見ながら言った。 どうして俺がコイツと一緒なんだよ?! わけがわからないよ。 俺だって、入社してからだいぶたつと言うのに今だにミスもするし、無理を言ってこようとする客が居たらすぐ顔に出てしまう所があるし、忙しい時はホントせかせかしてるし、なんなら最近はプリンにスプーンが1本ついてない事に腹を立てて店にクレームの電話までしてくるヤツいたし。 プリンのスプーンを付け忘れた俺も業務のケアレスミスをしてしまったから悪いけど、プリンのスプーンが無かったら家にあるスプーンでプリンをすくって美味しく食べるとか、そのくらいしろよと思う。 そんな小さなことも考えられないその程度の脳みそなのかと酷いことを思ってしまったが、まぁ分からなくでもない。 俺も昔、俺が働いているコンビニとは違うコンビニだけど、やられた事がある。 俺が買ったのはプリンではなく、年配の店員だったから弁当だったけど箸をくれと大きな声で2回も言ったのにも関わらず、箸をくれなくて嫌な思いをした事があるから分からなくもない。 俺も、俺の行動に腹を立て、店にわざわざご丁寧に苦情の電話までしてくれたその客の立場になったら、俺は店にクレームの電話はしないだろうけど、確かにいい気はしないだろうと思う。 「ね?柳葉くん私発注ミスしないようにパソコン作業に集中したいから。シフトの件、よろしくね?」ずっとシフト表を見て色々思っていた俺は、オーナーのその声でハッと我に帰った。 「ちょっ、待って下さいよ、なんで俺が…。💦」そうオーナーに声を掛けたんだがもう遅かった。 オーナーはパソコン作業に集中してしまっていた。 時すでに遅し……。 パソコン作業しながらでも耳だけは片方だけでもいいからこっちの方に傾けとけ。 そんなんでよくオーナーが務まるなと思うけど理由は分からないけどどことなく憎めないんだよなぁ、このオーナー…。 しかもなんで今だ気分だけはペーペーの俺に、コイツの教育係的なことを任せられるんだよ…。 よくシフト合うなぁと思ったらこれかぁ。 みんな新人教育は嫌がるならなるだけ俺と多くシフトが合うようにしてるのかぁ。 ははぁ、オーナーも考えたなぁ。 このポンコツの俺に? こんな役目が務まるのか? 確かにアイツは基本的なことは一応、オーナーや店長も含め色んなやつから教えて貰ってるみたいだが…。 客に対する態度がなってないような気がする。 こっちは仕事する側だというのに、客との距離が近すぎるんだよなぁ…。 はぁ…。 シフトを組まれシフト表として紙に記された以上、やるしかないのかな。 俺、ほんとついてない…泣。 ポンコツが基本的なこと以外何も出来ない新人を教育したらどうなるか、実際に目の当たりにしなくてもちょっと考えたら分かるのに。 ほんっっとーぉに、やってくれたなぁ!!!😄💢
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