You're like the sun

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
  ウユニ塩湖へ行こうといいだしたのは、伯父さんだった。 「死ぬまでに一度は見ておきたい絶景」だから? と聞くと、彼は笑って「伯父さんは二度目。はじめてなのはお前だけ」と答えてくれた。人生で二度目。ここからじゃ地球の裏側と言っていい場所に、なぜ二度も行くのか。 「思い出の場所なんだ。伯母さんとの」  伯母さんは先月亡くなった。だから伯父さんは、新婚旅行で訪れた思い出の地に行きたいらしい。どうせなら、まだ一度もウユニ塩湖を見ていない甥っ子も、連れて行ってやろうと考えたんだそうだ。伯父さん夫婦には子供がいなかった。だから、僕はその分可愛がられた。伯父さんは、本当は三人で行きたかったのかもしれない。  伯父さんが伯母さんと出会ったのは、まだ駆け出しの役者の頃、ふたりは映画のエキストラの仕事で出会った。夢を語り合って夜を明かしたり、相手のホン読みに付き合ったり、青春だったなぁと、懐かしそうにしている。だけど、夢がかなうなんてのは、ほんの一握りの人間だけなんだよね。結局二人とも、夢じゃなくて現実を見るようになって、伯父さんは会社員に、叔母さんは専業主夫になった。つまり、その映画がふたりの最初で最後の共演作になったわけだ。  映画のタイトルはどんなだったの? と聞くと、伯父さんは「忘れたよ」と言って、目を泳がせた。  だけど僕は、そのタイトルを知っていた。だって、伯母さんがこっそり教えてくれたから。伯父さんは、照れて絶対にそのタイトルを口にしないだろうから、私が教えておくねって。  子どものいないふたりに、弟夫婦である両親が名付け親を頼んだのが僕。僕の名前は、その映画からもらって「太陽」って名付けられた。だから叔母さんは名前の由来を教えてくれたってわけ。今じゃ恥ずかしいくらい、ベタなタイトルを。 『君はまるで太陽』
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!