ダメになりたい私のお夜食

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 その日、私は珍しくおしゃれをしていました。  学生時代の友人二人と、久しぶりに食事をしたのです。  二人とも絵に描いたようなキラキラ系女子なので、適当な(よそお)いで行くわけにはいきません。  普段なら十分で済ませるメイクに三十分かけ、滅多に着ない綺麗めワンピースを着て、パンプスを鳴らし街へ繰り出しました。  そうして友人と落ち合い、予約していたカフェレストランで、おしゃれで美味しい料理を食べました。  キラキラした女の子たちと、おしゃれな空間で、おしゃれなものを食べる。  そんな、ちょっと非日常な食事会をめいっぱい楽しんでから、私は帰路に着きました。  嗚呼、なんだか自分までキラキラ女子になった気分。  しかし、話が盛り上がりすぎてすっかり遅くなってしまった。お風呂に入ったら、すぐに寝よう。  そう考えながら、辿り着いた自宅の扉を開け、中へと入ります。  玄関でパンプスを脱ぐと、リビングに向かいながらストッキングを脱ぎ……  それを脱衣所のカゴへノールックでシュートすると、髪を(ほど)き、リビングのドアを開け、ワンピースのファスナーを下ろします。  鞄を床に置いて、ワンピースを脱いで、すぐに部屋着に着替えると……  ソファーにドカッと座り、一言。 「……はぁ。揚げ物食いてぇな」  これです。  この落差が、『帳尻合わせ』です。  家に入った瞬間、お出かけモードは終了。速攻で武装を解除し、待機充電モードへ移行します。  "おしゃれなキラキラ女子"気分のまま一日を終わらせることなど、私には出来かねるのです。  何故なら私は……  "おしゃれなキラキラ女子"ではないからです(迫真)。
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