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4※
「はい、どーぞ」
友人宅でお風呂も部屋着もお借りして、すっかりくつろぎモードになってしまった俺は現在、その友人に笑顔でビール缶を差し出されていた。
「なんで、酒あんの?」
「買っておいた」
「お前、こないだ20歳なったばっかなのにもう家で酒飲むん」
俺も別にそこまで酒が好きなわけではない。
ただ、せっかく堂々とお酒を飲める歳になったのだから、大人な気分を味わいたいという気持ちだけで、誰かと一緒の時だけ嗜む程度。
頂いた物はありがたく頂戴しよう、そう思いキンキンに冷えたビールを一口ぐいっと飲む。
「うーん。俺は飲まないよ」
ボス、とソファーの上で俺の隣に腰掛ける圭人。
その手には、ノンアルコールのお茶のペットボトルが握られていた。
「じゃ、なんで……」
「塁を酔わせるため」
「……あんまり聞きたくないけど、なんで酔わせたいの」
「適度に酔わせたらエッチできるかなって」
「欲望丸出しかよおい」
俺は慌ててビールをテーブルの上に置いた。
「酔っても、しないって」
「なんで?」
「男同士だから!言わなくてもわかんだろ」
「でも塁、こないだ無抵抗だった」
「それは酔ってたからだろ!」
「でも、」と圭人はなおも食い下がる。
「っん、ちょ……」
両手で俺の頭をガチリと掴むと、またしても、ちゅ、とついばむようなキスをした。
こいつ俺に何回こんなことしたら気がすむんだ。
少し慣れてきちゃってる自分までいる。怖い怖い。
「ほら、あんまり嫌がってない」
「今ビール飲んだからだよ」
「たった一口で酔っちゃうの、塁さんは」
するり、と俺の頭から腰まで掌を滑らせる。
触り方がエロい。よく、男相手にこんなスキンシップできるな。
「今日店に来た美人三人、あれお前に気があるだろ絶対」
「そんなことないでしょ。ただの仲良い同僚ってとこよ」
「いや、節穴かよ!絶対そうだって。押せばいけるって……そっちで童貞捨てさせてもらえよ」
「ええ~。でも、塁が先約だし」
どう考えても男の身体なんかより柔らかくていい匂いのする女性の身体を抱いた方がいいに決まってる。
そんなの日の目を見るよりも明らかなのに。
頑なに俺の冗談を実現しようとする親友に、俺はただ苦笑いを返すことしかできないでいた。
すると、突如部屋着のTシャツの中にもぞもぞと蠢くもの腰からが侵入してきた。
「ちょい、何その手は」
「雰囲気づくり」
「なぁ、だからしないって……」
「すべすべっすね、肌」
「んぁ……っ!?」
俺の言葉など御構い無しに、圭人は俺の身体を弄った。
前に伸びた腕は、あろうことか胸の突起をきゅ、とつまんだ。自分でも聞いたことのないような高い声が勝手に漏れてしまう。
「圭人……!どこ触って」
「あ、ごめん、わざと」
「だろうな!」
マジかよ、本当に触ってんじゃん。
そんな、女とセックスするみたいに、じれったく触るのなんなんだよ。
「っん,待って……」
「累さん結構可愛い声すね」
「へ、んなこというな……っんン」
くにくに、こりこり、胸を虐める指の動きは止まらない。ビクビクと絶えず身体が反応を示した。
「嫌なら、俺を殴って逃げたらいいよ。俺たち体格もあんまり変わんないんだし、できるっしょ」
「……っし、ねーよそんなこと」
「どして?」
「ピンチ救ってくれた恩人にそんなこと出来るかよ、普通」
大げさかもしれないが、圭人がいなければ俺は今頃路頭に迷っていたかもしれない。
こうして泊めさせてもらえるのは、めちゃくちゃありがたいのだ。
それに、しばらくこんなギリギリ笑えないノリが続いているから、まだろくに誕生日だって祝ってやれてない。
本人には気恥ずかしくて言わないけど、俺にとっていちばんの友人なのに。
「へぇ……」
「って、なんだよその反応……」
「いや……塁のそういうところ、好きだよ」
「好き」という一言に、全身が熱を持つのがわかった。
違う、そういう意味で言ったんじゃないだろ。何で俺、動揺してんだよ。人として、ってことだろ。
こんな距離感バグったスキンシップばっかされてるから、感覚が麻痺してるのか。
「なっ、なあ、もういい加減やめよーぜこういうの」
「ん~?」
「おいって、聞いてんのかよ」
とぼけた反応を示す圭人は、俺のやんわりとした制止を無視して身体を弄り続ける。
すると突如、胸をいやらしく愛撫し続けるそれとは反対の腕がすっと下に降りてきた。
「あれ、ちょっと勃ってる」
「~~ッ!?」
そして信じられないことに、友情の触れ合いの枠を明らかに超えたその敏感な部分に、躊躇することなく触れた。
「な、な、なにして……!」
「だって、塁、あんまり嫌がってないから、つい」
「嫌がってないからって友達のちんこ触る奴があるかよ!」
あっけらかんとした様子で、圭人はその手をゆっくりと動かす。
根元から撫でるようにして、俺のモノを扱いていった。
「っん、んぅ……や、め……」
「あは、ビクビクしてる……きもちい?」
「ンなとこ触られたら……っき、気持ちいに決まってんだろっ……んッ」
やばい、やばいって。このままじゃ完勃ちしちまう。
よりによって男友達の手で。そうなったらいよいよ笑い事じゃなくなる。
この間は酔ってたからどうにでもなれの精神で許容したけど、こんな冴えた頭で、男同士でこんなこと……俺の許容範囲完全に超えてるって。
必死に、俺のモノを撫でる親友の腕を掴むが、敏感な部分を触られてうまく力が入らなかった。
「ねぇ、ベット、行く?」
「……っ!」
俺のがどんなに葛藤しているかも知らないで、圭人は低く甘ったるい声を耳元で囁く。
まるで全身をくすぐられたかのように、俺の肩はびくん、と跳ね上がった。
だめだ、このままでは、こいつのペースに乗せられて、ずるずると行くところまで行ってしまう。
そう、本能で理解して身震いした。
圭人はもの欲しそうにじっと俺の目を見つめ、何故か俺も視線をそらすことができなかった。
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