仲直りのチキンドリア

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    「これは何かしら?」  彼の部屋でカーペットの上に落ちていた細長い物体。最初は糸くずか何かだと思ったが、指でつまんでみたら髪の毛の感触だった。 「私には、ロングヘアーに見えるんだけど?」  長さ的に考えて、男性ではなく女性の髪のはず。  でも私の髪型はベリーショートだ。子供の頃は、母親に言われるがまま伸ばしていたけれど、大学入学を機にバッサリ切って、今の髪型を続けている。  だから彼の部屋で見つけた髪の毛は、明らかに私のものではなかった。 「……」  テーブルの向かい側に座る彼は、困ったような顔になっている。  別に返答に詰まったわけではなく、私の態度に対する反応なのだろう。彼の表情を見てようやく、自分が眉間にしわを寄せていることに気が付いた。自分でも嫌になるが、いったん口から出た言葉の勢いは止まらない。 「女の子がこの部屋に来たの?」 「うん。ゼミの友だち。うちで宅飲みだった」  私と彼は、サークルで知り合って付き合い始めたカップルであり、学年は同じだが学部は別々。  私は自分のことをペラペラ喋るタイプなので、彼が知らない友人も一方的に話題に出すけれど、彼はそういうことはしない。だから私は、彼のゼミの交友関係については全く知らなかった。  そもそも彼は無口な人間であり、サークル内でも「何を考えているのかわかりにくい」と言われていたほどだ。「だからこそミステリアスで素敵」と思ったのは私くらいであり、おかげで恋のライバルも一切なかったわけだが……。    
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