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5.
そうだ、彼女と出会った日は、空襲があった日…
僕は午後の仕事がまるで手に付かなかった。
定時を過ぎると、僕はある場所へと向かった。
供養塔
あの空襲で犠牲になった人名がすべて刻まれている。
この塔の存在は知っていたが、来るのは初めてだ。
僕は花を手向け、祈った。そして探した、あの名前を。こんなに多くの若者の中から…。
学校ごとにあいうえお順に並んでいるので、探しやすかった。ありませんように、と願いながら…。
そして、ま行。
真木冬子
あった…。
その名前を目にした途端、僕は膝から崩れ落ちた。そして、その凹凸のある名を指でなぞった。
少女の微笑み、声、姿が脳裏に浮かぶ。やるせない気持ちでいっぱいになって、しばらく動けなかった。
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