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世の中、理不尽でございます。
~一ヶ月後~
結局旅行で二キロも太った。帰って来てから毎朝ジョギングに励んだ。当然、葵を付き合わせた。何で私が、と言いながらちゃんと着いてきたあたり負い目は感じていたらしい。だったら最初から自粛しろっての。
そして今、体重を計ったらば。ひと月ぶりに元に戻った。よっしゃぁ、とガッツポーズをとる。走るのは別に好きじゃない。体型維持だけが目的だ。明日からはジョギングをしなくていいわね。
葵へ電話を掛ける。スリーコール目で、うい、と応じた。
「体重、元に戻った。二キロ減らした」
得意気に伝える。そうか、と明るい声が返って来た。
「ちなみに私は四キロ痩せた」
「何でよ!」
「くびれも綺麗になったし腹も引き締まった。ありがとな、恭子」
世の中理不尽にも程がある! ところで、と葵は話を続けた。
「駅前に新しい喫茶店ができたな。太麺のナポリタンとチーズたっぷりのマルゲリータが絶品らしいぜ。そろそろ昼だ。一緒に食いに行かないか」
「まだ味を占めているの?」
「ダイエットを終えた相方に美味しい食事を奢りたいだけ。今日も走って腹減っただろ」
しばしの葛藤。そして。
「もし明日からもジョギングすることになったら付き合ってくれる?」
「恭子のためならいくらでも」
行く、と受話器へ叫ぶように答える。そして電話を切り支度を始めた。
あー、お腹減った!
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