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【1】
「ぱぱ、おなかすいた……」
「うん、そうだな。もうすぐママ帰ってくるから待ってな。でもちょっと遅いなあ。瞬、ジュース飲むか? あ、なんかお菓子あったっけ……」
自分のほうが早く仕事終わって帰ってるのに、保育園に俺を迎えには行っても、家に着いたら何もせずにただ妻の帰り待ってるだけ。
俺の父親はそういう男だった。
せめて洗濯物取り入れろよ。朝食べた分の食器くらい洗えよ!
「お前、いったいなんのためにいるんだよ。家族として何かの役に立ってんの?」
今ならそう言ってやるのにな。
もうどこでどうしてるかも知らねえあいつに。
悪いやつじゃなかったとは今も思ってる。
ただ、バカだった。それだけ、なんだろう。
ずっと仕事続けてて自分と子ども一人養うくらいなら十分な収入があった母は、俺が小学校入ってすぐにとうとう離婚した。
あれからもう二十年が経つ。
俺は大学時代から一人暮らしで基本自炊、もちろん掃除も洗濯も機械は使うけど全部自分でやるしかなかった。
だから母の気持ちがよくわかる。
何もしない、世話掛けて来るだけの大人の男なんてただ邪魔なだけだって。
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