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金欠パーティー1
――バンッ!
シグルズは少し力を込めた拳を居酒屋のテーブルへと叩き付けた。自分では中々に力強く殴ったと思っていたが、案外その音は周囲で盛り上がるお客の喧噪にあっさりと埋もれてしまった。
ちなみにそこから発言するまでに数秒掛かったのは思ったより叩きつけた手が痛かったからである。
そしてシグルズは、その痛みを堪えながら俯かせていた顔を(少しでも時間が欲しかったのだろう)緩慢と上げては、何もなかったと言わんばかりの顔を仲間達へと向けた。堂々と自信に満ち溢れた顔と少し鋭さを帯びた双眸が仲間を撫でるようにさらっと順に見ていく。
一方で理由を問うように同じテーブルに座る仲間達は、逆に彼へと視線を向けて続けていた。
「今、このパーティーは重大な問題に直面している。それはなんだ!」
言葉の最後に合わせ勢いよく指差したのは、シグルズから見て(テーブルの向こう側の)一番右手。
そこに座っていたのは、世にも奇妙な純白の骸骨――フィリア・ハイルング。その身は皮も肉も無く、ダイエットの最果てとでも言うのか骨のみ。そんな彼女は魔導士ローブを身に纏い、ちょこんと座る自身と同じ高さ程の可愛らしく装飾された魔法杖をテーブルへ凭れさせていた。
そして全てを呑み込みそうなほど黯い双眸の奥では、不気味にだがどこか愛らしく躑躅色の光が灯っている。恐らくそれが目の役割を果たしているのだろう。
「カルシウム不足じゃないですか?」
だがそんな外見とは相反し、聞こえてきた声はとても可愛らしく目を瞑れば美少女を想像するようなものだった。
「うちもその所為で最近お肌の調子が……」
そう続けるとやはり肉も皮も無い、肌と表現するのは些か抵抗を感じる顔に同じ様に骨のみの手で触れた。
「フィリア。俺達はそんなにカルシウムは必要じゃないし、そもそもそれは個人の問題だ」
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