眠れぬ夜の処方箋

『いやー、笑(わろ)たわー。オリンピック選手に匹敵するくらいの羊やったんやなぁ。でな、トモちゃん。羊を数える時って英語の方がええんやって』

「英語？」
訊き返しながら、外したイヤホンをスッと戻す。

『うん。one sheep，two sheep……って感じでな、数字だけ増やしていくんよ。日本語やと匹の言い方が変わるやろ？　ぴきとかひきとか、にごったりとかして、逆に頭使うやん』

「あぁ、なるほど」

『英語バージョンの数え方は一定のリズムでリラックスしやすくなるのと、“数を数える”っていう単純作業で脳が疲れやすくなるんやって。諸説あるらしいけどな。ま、ネットの受け売りやけど』

「へぇ……」
『あ、今はやらんといてな。話し始めたばっかりやから。今度寝られへん時に試してみて』
「ふふ、はい」
『で、そんなこんなで今に至るってわけやんな？』
「なんかざっくりまとめられた気がしますけど、まぁそんな感じです」
『ええんかい。ほんまにざっくりやな』

一人でちょっとしんみりしてたことなんて、敢えて口に出さなくてもいい。大まかに括って貰えて助かった。