眠れぬ夜の処方箋

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「ねぇヤマさん。単純な疑問なんですけど。前は訊かなかったから」 『うん?』 「彼女さんとかいらっしゃるのかなって」 『あー……おらへんよ。何で?』 「前話した時に、元彼の引っ掛かった行動をあれこれ言ったじゃないですか。残業のくだりのやつとか」 『うん』 会う約束をしていたのに直前の直前になって、〔突発的な残業で仕事が長引いて、今終わった。疲れてるから今日はごめん〕とメッセージがあった。 残業なら仕方がないなと感情を押し込めて、〔分かった。ゆっくり休んでね〕と返信をした。 一度ならず何回も続いたのでさすがに怪しいなと思いきや案の定、だったのだけれど。 「『仮に残業だったら、俺やったらこうする』って言ってた内容、女性側の言って欲しいこと解ってる方だなって思って。それで、です」 『いや、俺は女心は分からへんよ。たぶんこうした方がいいんやろうなって気を回してるだけやから。気を回しすぎて空回りして自滅するから、あかんねん。トモちゃんの今回……やなかった、前回の件は、相手のマナーっていうよりかモラルの問題やったと思うし』 「んー、まぁ……たしかに」 『タイミングにしろ配慮にしろ、寂しかったやろうなと思うんやけど。違う?』
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