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特別養護老人ホーム、いわゆる特養や他の老人介護施設の仕事は軒並み重労働である。 国からの補助金があり、介護施設で働く介護職の給与が病院勤務の看護師並みに上がったというものの、夜勤はユニット型の場合2ユニットの約20人をたったひとりの介護職員が対応する配置となっている。 もしひとりでも寝ずに徘徊などする入居者がいれば、それだけで他の入居者の対応が難しくなる。 日勤帯はまだ人手が多いとはいえ、介護度の高い方々ばかりなので車椅子移乗などで腰痛はもちろんのこと、全介助で口をなかなか開けてくれないところを食べてもらうのに引っ掻かれたり罵倒されたりと、精神的にも負担が大きい。 ここ『桃源郷・さんや』は、入居者層の身元を厳選しているという噂もあるが、手厚い介護に定評がありいつも待機者名簿は埋め尽くされている。 この施設には、山田みどりという熟練の看護師一名がおり、不在時などには経営母体である病院の『最先端医療・山の手病院』から支援されるシステムだが、山田の評判がこれまた良いのだ。 また山の手病院長の茅鳥は、この施設の病院長を差し置いて、秘書兼看護師の咲耶マユと連れ立ってこの山谷地区の訪問診療の際に足繁く立ち寄っているのも、人気の一因だった。 妖怪のような見た目と人格はさておき、茅鳥医師といえば世界的にも有名な医療技術を持つレジェンドなのだ。
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