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 イチロウ君が出ていってから十分後、ミサトが会議室に入って来ました。 「どうして呼ばれたのか分かりますか?」  ミサトは胸の前で腕を組んで首を横に振りました。その態度が気に食わないのか、シズコ先生は奥歯を噛み締めました。 「あなたがケンヂ君をいじめたからです」 「どうしてそう思われるんですか」  ミサトはシズコ先生を睨みつけて言いました。 「他の生徒達からの聞き取りで聞いたからです」 「先生。私は聞き取りを受けていないんですが、それは一体いつ、どのくらいの範囲で行われたんですか」 「守秘義務があるので明かせません。ミサトさん、優秀なあなたならそのくらい分かるでしょう。それよりも――」 「私がいじめの現場に居た、と言いたいんですか」  ミサトが遮るように言いました。 「ええ、そうね」  シズコ先生は冷静を保つためか、深い呼吸を繰り返していました。でも、ミサトを睨む目には凄まじい怒気を感じます。 「ケンヂ君をいじめるショウタ君を、イチロウ君と私が黙って見ていた、と」 「ええ、立派ないじめだわ」 「プロレスごっこで遊ぶ二人を応援する二人。どこにいじめがあるというんですか」 「加害者がどう思おうと、被害者は――」 「その話はさっき廊下でショウタ君とイチロウ君から聞きました。二人に無理矢理いじめ加害者だと認めさせたみたいですね」
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