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プロローグ:魔法は言葉を話さない
別に、難しいことではない。
不可能なミッションではない。
私が魔法を操っていることの方が、よっぽど非現実的だと言える。
なのに、なぜ!
なぜこんなに簡単なことが出来ずにいるのだろう。
木を焼き尽くすことだって、池を凍らすことだって出来る私にとって、造作もないことのはずなのに。
いや……違う。
本当は出来ない理由も、分かっている。
それは『魔法は言葉を話さない』からだ。どんなに強大な魔法を使えたって、言葉を伝えることは出来ない。伝えるべき言葉は、自らの口を動かして、喉奥から音を振動させる必要がある。感情込みでね。
私には、それが出来ない。
幼馴染の戦士・ローゼンに「好きだ」というたった三文字の言葉を伝えることが、どんな難解な魔導書を紐解くよりも困難なのだ。
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