Ⅰ.特訓

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 私達は、目的のバーヘーゲンの森へと辿り着いた。  ここに『一角バニー』が生息していることは予め知っていた。だから遠からず近からず、丁度よい距離にあるこのバーヘーゲンの森を目的地に設定していたのだ。  けれども、結論から言えばその目測は誤りだったらしい。  全く私にとって大した特訓にならないまま、目的の『一角バニー』がぴょこぴょこと姿を現してしまったのだ。 「ノイ! いたぞ、あいつだろ!?」 「あ、うん。じゃあ、<捕縛(アレスト)>」  私が捕獲魔法を唱えると、杖の先から光の鎖が飛び出して、逃げようとしていた一角ウサギの体を締め上げた。 「ナイス! よっし、これで依頼達成だな!」 「……うん」  達成したけど、達成してない。  ついつい本気の捕縛魔法を唱えてしまった。もっとちまちまと時間のかかるやつで、時間を稼いでも良かったのかな。  ていうかこの一角ウサギ、どうしよう。  もふもふの体と垂れた耳は可愛いけれど、眉間から生えた槍みたいな角は鋭利で危険だ。ペットにするのは難しいかも知れない。誰かそういうの好きな人に買い取ってもらおう。 「ノイ」 「え? なに」 「いや、なんか今日は平和でさ、楽しかったな」 「……うん。そうだね」  今。  絶対になんか、良い雰囲気だった。  私が勇気を出せば、を言っても良いような空気感だった。  でも無理だった。ローゼンの顔を見てしまったら。あの笑顔を見てしまったら、私は自分の感情を出すことが、出来なくなってしまう。  私が一角ウサギにそうしたように、体が動かなくなってしまうのだ。  今日の特訓、成果はあったのだろうか。私個人的には、嬉しい言葉を聞けたから満足ではあるけれど。
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