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Ⅲ.決戦
―――時は来た。
今回は、普通にローゼンを「話がある」と近くの草原に呼び出した。
先に到着していた私は物陰に身を潜めてその時を待つ。
すると、ローゼンが何食わぬ顔で姿を現した。大剣こそ背負ってはいるが、防具をあまり身につけていない普段着に近い軽装だった。
私は杖を構える。
いよいよだ。いくら魔法の力を借りるとは言っても、魔法は言葉を話さない。結局想いを伝えるのは私の口だ。やはり緊張する。
でも!
もうこんなことでモヤモヤするのは嫌。
ちょっと反則技を使うけれど、私なりに正々堂々と、気持ちを伝えるんだ。
私は意を決して、茂みから飛び出しながら杖を構えて唱える。
「<透明人間>!」
「え!?」
杖の先から放たれた光がローゼンを包み込んだかと思うと、次の瞬間にはその姿は消えていた。
「ローゼン! ごめんね、そのまま聞いててね!」
反応はない。そりゃそうか。声もろとも消してるんだもんね。
もう聞いているものとして、話すしか無い。
「ローゼン。私は、ずっとずっと、昔からずっと、ローゼンの事が好きだった」
言った。
言っちゃったよ。ていうかいるよね、ローゼン。
まさか逃げてないよね。私は続ける。
「昔から知りすぎてて、恥ずかしくて、今更それを言えなくなってた。だから、ごめん、顔を見てると言えなくて、姿を消しちゃった。でもね、それくらい私、ローゼンのこと、好きなの」
私は最後の言葉を前にして、ひとつ息を吸い込んだ。
「ローゼン……私のこと、恋人にしてくれる?」
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