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告白した。全てを出し切った。
もうこれだけでも満足なんだけどさ、ローゼンの返事を聞きたいと思う欲張りな私も存在していて、私にそれを急かしてくる。
「ローゼン、今魔法を解くから。返事を……聞かせて」
私は再び杖を構えて発した。
「<反・透明人間>!」
杖の先から光が発せられた……と思ったら、それは私の目の前で弾けた。
……あれ、解除失敗した?
もしかして透明化ってシンプルな反対魔法で解除出来ないのかな。
そんなことが頭をかすめた瞬間、私の体はなにかの感触を覚えたのだ。
唇に、柔らかい感触。
両肩を、力強く掴まれている感触。
――ハッとした。
気が付くと、私はローゼンに唇を奪われていたのだ。
まさか透明化している間にこんなに距離を詰められているなんて、予測していなかった。魔法が裏目に出た。
え!? なにこれどうなってんの!?
てか私なんか食べたっけ!? 臭くないよね!?
まるで<精神錯乱>をかけられたみたいに、私は混乱してしまった。こんなことなら、先に<捕縛>でもしておいた方が良かったのだろうか。
触れた唇同士を名残惜しそうに分離させながら、ローゼンが発した。
「――俺もずっと、ノイのことが好きだ」
そのローゼンの言葉が、惑乱した私の精神を回復させた。
「俺から告白すべきだったよな。魔法まで使わせて、ごめん」
「……ほんとだよ」
私はギュッとローゼンに抱きついた。手放された杖がその場に横たえる。本当の意味で魔法がいらなくなった瞬間だった。
嬉しかった。安心した。涙が出た。
そして同時に、勿体無かったな、と思った。
なぜなら、私が告白しているときのローゼンの顔が見られなかったから。告白が成功したからって、我ながら虫のいい話だと思う。でもそう思ってしまったのだから仕方がない。
一体どんな顔で告白を受けて、どんな表情で私の前に歩み寄って、どんな目で私に唇を重ねたのだろう。それを知らないって、なんだか寂しいような、勿体無いような気がする。
すごく美しい光景を見ているときは、瞬きすら惜しい。
そんな気持ち分かるでしょう。
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