番外編1 猫のつぶやき

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 あたしはきっとしあわせなの。  このいえに来たときのことは、あんまりおぼえていない。それぐらいずっと前からここに住んでるの。  ここにはふたりの人間がいるけど、どっちも動きはおそいし、すわれば長い時間かたまってしまうの。しかたがないから目についたらそばにいて守ってあげてる。あたしはデキるネコなの。  ときどき、あたしのからだをなでてくるけど、かんだいなあたしはゆるしてあげる。 しわくちゃの手があったかくて気持ちいい、なんていうのはないしょ。もっとなでてほしいときは、ひざの上にすわってうわめづかいで甘えればイチコロなの。  ふたりはいつもあったかいばしょにいるから、あたしもいっしょにぬくぬくできて、とってもきもちいい。  さいきん人間の子どもがたまに来るようになったの。これがうるさいくらいに元気で、あたしを見るといっつもおいかけてくるこまったちゃん。  それでもあたしはこの子よりもおねえさんだから、しかたないからあそんであげてるの。いつのまにかあたしの方がはしゃいでいる気がしなくもないけど、その子だっていつもわらってるし、みんながたのしければそれでいいでしょ?  それにしても、あたしのなまえってなんなのかしら?  はじめは「ノエル」といわれてたの。でも、いまでは「ノエちゃん」「ノンちゃん」「ノエ」と、いろんななまえでよばれてる。まああたしはかしこいから、それがどれもあたしをよぶ声だとおぼえたわけだけど、やっぱりおんなじなまえでよんでほしいのよ。  ほかにもいいたいことはあるんだけど、ここは外が雨でもぬれないし、おなかがすごくすいちゃう前にごはんが食べられる、天国みたいなところ。  だからここにいるふたりの人間は、きっと天使なのかもしれない。すごくとしをとっちゃってるけどね。ん?それなら天使じゃなくて神様なのかしら?    とにかく、そんな天国にいるあたしはやっぱりしあわせなのよ。ずっとずっとここにいたいなあって、ねるまえのまどろみの中でいつも思ってるの。 番外編1 完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加