1人が本棚に入れています
本棚に追加
あたしはきっとしあわせなの。
このいえに来たときのことは、あんまりおぼえていない。それぐらいずっと前からここに住んでるの。
ここにはふたりの人間がいるけど、どっちも動きはおそいし、すわれば長い時間かたまってしまうの。しかたがないから目についたらそばにいて守ってあげてる。あたしはデキるネコなの。
ときどき、あたしのからだをなでてくるけど、かんだいなあたしはゆるしてあげる。
しわくちゃの手があったかくて気持ちいい、なんていうのはないしょ。もっとなでてほしいときは、ひざの上にすわってうわめづかいで甘えればイチコロなの。
ふたりはいつもあったかいばしょにいるから、あたしもいっしょにぬくぬくできて、とってもきもちいい。
さいきん人間の子どもがたまに来るようになったの。これがうるさいくらいに元気で、あたしを見るといっつもおいかけてくるこまったちゃん。
それでもあたしはこの子よりもおねえさんだから、しかたないからあそんであげてるの。いつのまにかあたしの方がはしゃいでいる気がしなくもないけど、その子だっていつもわらってるし、みんながたのしければそれでいいでしょ?
それにしても、あたしのなまえってなんなのかしら?
はじめは「ノエル」といわれてたの。でも、いまでは「ノエちゃん」「ノンちゃん」「ノエ」と、いろんななまえでよばれてる。まああたしはかしこいから、それがどれもあたしをよぶ声だとおぼえたわけだけど、やっぱりおんなじなまえでよんでほしいのよ。
ほかにもいいたいことはあるんだけど、ここは外が雨でもぬれないし、おなかがすごくすいちゃう前にごはんが食べられる、天国みたいなところ。
だからここにいるふたりの人間は、きっと天使なのかもしれない。すごくとしをとっちゃってるけどね。ん?それなら天使じゃなくて神様なのかしら?
とにかく、そんな天国にいるあたしはやっぱりしあわせなのよ。ずっとずっとここにいたいなあって、ねるまえのまどろみの中でいつも思ってるの。
番外編1 完
最初のコメントを投稿しよう!