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それ以来僕はノイローゼになってしまい、布団に入ることが怖くなりました。心配してくれる彼女にまさかこんな荒唐無稽な話ができるわけもなく、一人夢に怯える日々を過ごしていました。
毎夜毎夜、家の中のものが一つずつ消えていき、代わりに夢の中の部屋は一つずつもので満たされていきました。
けれど部屋にものが増えていくからと言って、快適になるというわけではありません。乱雑に無秩序に部屋の中に詰め込まれていくのです。
ベッドの上にテーブルが置かれ、その上には例の友人が仰向けに横たわっています。横倒しになった本棚に覆いかぶさるように置かれている虚ろな父の姿。天井を向いて倒れているクローゼットの中には、ぐちゃぐちゃの洋服と身体を丸めた母が詰め込まれているのです。
不思議なのは、どれだけ物が減っても彼女が不審に思う素振りを見せなかったことです。ベッドやクローゼットがないなんて不便極まりないでしょう。ところが彼女はそれがさも当たり前のことであるかのように、愚痴ひとつ漏らさずに生活しているのです。
それがなんだか空恐ろしく、現実世界でも夢の世界でも心が休まることがありませんでした。
もう限界でした。はやくこの地獄から解放されたい、その一心でした。
そしてある夜、ついに僕が最も恐れていたことが起こってしまったのです。
夢の中で目を覚ますと目の前に誰かが立っていました。
俯いていたので足元しか見えませんでしたが、すぐに分かりました。彼女です。
ああ、その時の僕の絶望といったら…。
僕は絶望のあまり頭を抱え込んで何度も首を振りました。彼女の顔を見ることはできませんでした。だってそんなことをすれば、彼女が夢の中に出て来たことを認めてしまうみたいじゃないですか。僕は膝に顔をうずめ子供のように泣きじゃくりました。
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