プロローグ

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 私は黎に向き直り言った。「ここが異世界ということは、その耳も作り物じゃなくて本物?」  「そやで。触ってみるか?」  「遠慮しておく──…、あ、やっぱりちょっとだけ…」  私は差し出された黎の耳におそるおそる手を伸ばした。大きな耳はふさふさした柔らかい毛に覆われており、触り心地は犬や猫の耳とほとんど変わらない。私は彼の耳を触りながら訊いた。  「これって犬の耳?」  「いや、狼。ついでに言うと俺は狼の神様で、真白は白蛇の神様や。だから五百年以上も生きてるわけ」  私に耳の後ろを掻かれた黎が目を細めながら言った。動物も神様も耳の後ろを掻かれるのが好きなのは共通らしい。  「それで、神様が私に何の用なの?」  私の質問に答えたのは真白だった。「君に僕たちの妻になってほしいんだ」  「──はい?」
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