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14.凋落の國
若き女王が戴冠を終えたばかりの頃、奇病が城内で蔓延した。体内の魔力が硬化し、花の形を模った瘤のようなものが身体のあちこちに突出する病。魔力の循環が堰き止められ、罹患した者は忽ち死の淵に追いやられた。伏していくのは何故か女王に近しい者達ばかり。宰相が口を切る。女王が寄主なのではないか、と。
以降女王は自室に軟禁され、発症の報告はそれ以降、ない。やがて宰相が摂政を気取り政務を執り行い始めたが、女王が講じようとしていた施策の殆ど、特に貧民窟の整備等は急を要さぬと先送りするばかり。圧政を敷く宰相を止める良臣は、既に不帰の客である。
城内で働く者達は口々に噂を紡ぐ。
「この件について何故宰相は調査しない」
「呪いか」
「魔事に精通する宰相が女王に呪いをかけた」
信頼する者を次々と失い心身を病んだ女王と共に、この国は凋落してゆくのみなのか。革新を牽引する者も居らず、国民はみな悲嘆に暮れる。
そんな寂然とした祖国を背に、誰の見送りもなく一人、旅立つ影があった。誇り高い近衛騎士団、最後の生き残り。
──病の治癒法、宰相の呪の証拠を揃え、必ず戻る。まだ死ぬものか。あいつの首を刎ね、あの御方の手の甲に再び唇を落とすまで。
旅立つ騎士の手首には、花形の瘤が、ひとつ──
▶︎お題【病んだ女王,誇り高い,貧民窟】
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