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会社の資料室に入ると、いつもどこからか聞こえてくる声。
「にく…にく…」
繰り返される不気味なつぶやき。
いもつはそれを聞き流して、さっさと部屋を出るようにしていたけれど、今日はその訴えと向き合うことにした。
「にく…にく…」
声が聞こえたと同時に、持ってきた鞄を開き、中の物を取り出した。
大きめのトレーを床に置き、そこにスーパーで購入してきた数種類の肉を並べる。
牛、豚、鶏…売っていたから、羊の肉も買ってみた。
こうまで訴える程『肉』が欲しいんだろ? だから買ってきたよ。
冬場だしこの部屋は寒いから、一日くらいなら置いていてもきっと大丈夫。
どうかこれで安らかになってくれ。
* * *
会社の資料室に入ると、いつもどこからか聞こえてくるつぶやき。
「憎い…憎い…」
そういえば俺が入社するよりかなり前に、パワハラで自殺した人がいたと、先輩に聞いたことがあったっけ。
自殺の場所はここじゃないらしいけれど、どうしてか、その人の霊がこの部屋に留まっているのだろう。
俺にはどうすることもできないから、ともかくなるべくここには近寄らない、入っても、用事がすんだらすぐに出る。
それを心がけていたけれど、今日はさすがにすぐには部屋を出られなかった。
資料室の床に置かれたトレーと、その上に並べられた数種類の肉。それに意識が釘付けになったからだ。
…これはいったい何なんだろう。もしや、これが何かの霊障なのか?
資料室の床に肉が置かれた肉。不気味でたまらないから一刻も早くこの部屋を離れよう。
訴え…完
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