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◇
「ほっ、本日西宮へお勤めとなりました凌云と申します。よっ、宜しくお願い致します」
「「こちらこそ宜しくお願い致します。これから私共が凌云徳妃のお世話をさせていただきます」」
!?
えっ、凌云……徳妃……。
「あっ、あのぉ……」
「はい、なんで御座いましょう凌云徳妃?」
いや、聞き間違いじゃない。
「えっ、えぇえええ!?」
「どっ、どうなさいましたか凌云徳妃」
私は陛下があの日東宮で囁かれたサプライズは、てっきり夜伽のお務めだと思っていた。それがまさかの大出世、3千人もいるこの後宮内のいち女官が、あの日の出逢いをきっかけに四妃嬪の中の妃嬪上がってしまったのだ。
陛下との一夜の恋の夢で終わると思っていたものが、彼とのお子を儲けても許される地位へと返り咲いた。
天にも昇る幸せとは正にこんな気持ちを表すのだろう。
この時は凌云という名前を付けてくれた親に感謝しかなかった。
名前の由来は雲を凌ぐほどに高く上り詰める、つまり天よりも高くなれる壮大な人間になることを望み名付けてくれたのだ。
しかし、結末を考えると、天国というよりも私の人生は地獄だと言った方が良いに違いない。
「だって、壁向こうの掘りに投げ捨てられるんですものボソッ」
しかし、終わったはずの私が、何故この淑妃が住まう寝所にいるのだ?
「おはようございます、丽美淑妃」
「おはようございます」
!?
「どっ、どうかなされましたか淑妃?」
「えっ、私が丽美……淑妃?」
「はい、左様で御座いますが」
私が……丽美淑妃……。
凌云として戻って来たんじゃない。
それに丽美様は内廷はされなかったはず。
それじゃあ、歴史自体が変わった?
それとも私の死んだ後の世界?
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