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「……はい。
すみませんでした」
もう一度ため息をつき、彼はようやく私を解放してくれた。
「……いい加減にしてほしいのは私のほうだよ」
ひとりになり、辺りを真っ黒に染めそうなため息をついた。
伶龍は私の言うことをまったく聞いてくれない。
元は刀だし人間としての常識がないのかと思ったが、母の初戦はそれは見事なものだったと、最近ずっと私と比較して祖母から耳が痛くなるほど聞かされている。
だったら、個人……刀だから個刀?の問題なんだろうか。
「……ハズレ引いちゃったな……」
またため息をつき、腰を浮かせかけたところで伶龍が顔を出した。
頬にはテープが貼られており、赤い線が滲んでいた。
やはり矢が掠っていたようで、さすがに悪い気持ちになる。
「やーい、怒られてやんの」
ニヤニヤ笑い、私をからかう彼を力一杯睨みつける。
私はまだ汚れた姿だというのに彼のほうはお風呂に入らせてもらったのか、さっぱりとしていた。
私は巫女といえどただの人間で、あちらは刀で神様なので扱いが違うのだ。
「……誰のせいだと思ってるのよ」
「あ?」
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