第一章 〝さいきょう〟の刀

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ふて腐れ気味に俯いて視線を逸らす。 育ての親とはいえ私は、さばさばとした祖母が苦手だった。 「いい加減、決めたらどうだい。 あんなもん、手を突っ込んで適当に掴めばいいんだよ」 はぁーっと呆れたように祖母がため息をつく。 ……その結果が、それですか。 ちらりと、祖母の後ろに立っている男に視線を向ける。 目のあった彼は、柔らかく私に微笑みかけた。 髭面で筋骨隆々な彼は、祖母の刀だ。 数えで二十歳のときに彼を選び、以来折れることなく四十三年。 祖母は彼とともに過ごしている。 ちなみに黒スーツ姿なのは、それが刀の制服みたいなものだからだ。 「いや、適当とか言われてもさ……」 ごにょごにょと口の中で呟き、庭石に視線を向ける。 折れたりしないかぎり、選んだ刀と生涯をともにせねばならない。 ならばお婿さんよりももっと慎重に選ばないと……などと思っているのは、私だけなんだろうか。 「うだうだ悩んだところで決まりゃしないだろ。 掴んだそれが運命の刀だ、覚悟決めろ」 「あいたっ!」 私の背後に手を回し、祖母が思いっきり背中を叩く。
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