26人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
「ちょ、邪魔!
どいて!」
「うっせぇっ!」
私を振り返りもせず、伶龍は強引に力で押していく。
その勢いには感情などないはずのそれもたじろいでいるように見えた。
「もうっ!」
短く愚痴を漏らし、弦を引く。
今度は伶龍に当たらないように慎重に狙いを定めた。
けれどちょこまかと彼は動き回り、難しい。
「少しくらいっ、じっとしててくれればいいの、にっ!」
放たれた矢は緩い放物線を描きながら空気を引き裂き飛んでいく。
――うぉぉーん!
矢が当たり、それが声を上げる。
伶龍の頬を矢が掠めたように見えたが……きっと気のせいということにしておこう。
続けざまに二本、ほぼ同じ場所に矢を打ち込む。
同時に蟲たちも散っていった。
おかげで。
「見えた!」
それの核である、赤い球状のものが姿を現した。
「あと、は……」
御符を矢に突き刺し、弓につがえる。
核に狙いを定め、弓を引き絞った瞬間。
「もらったーっ!」
「えっ、あっ!?」
跳躍した伶龍が、核へと刀を突き立てる。
最初のコメントを投稿しよう!