第零章 穢れ討伐

5/12
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
思わず手を弓から離してしまい、矢は明後日の方向へと飛んでいく。 深々と刀の刺さった核から、ピシリとひび割れる音がした。 「ヤバッ!」 しかし時すでに遅し。 一気に収縮した核は溜め込んだエネルギーを放つように破裂した。 辺り一帯を血のように赤い雨が降り注ぐ。 当然、私もずぶ濡れだ。 「あーあ。 また怒られる……」 「ははははははっ。 倒してやったぞ!」 憂鬱なため息をつく私とは反対に、伶龍は勝ちどきを上げるかのごとく高らかに笑っていた。 「いったいいつになったら、満足に祓えるんですか」 「……すみません」 生きていれば私の母ほどの年の男性に叱責され、身を小さく縮み込ませる。 町はあれが破裂してまき散らした液体で、建物も道路も赤く染まっていた。 防護服を着た人々が浄水を撒いてそれを除染している。 「除染費用がいくらかかるかわかってるんですか」 「……すみません」 同じ言葉を繰り返し、ますます身を小さくした。 あれの核を切れるのは伶龍の刀だけ。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!