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思わず手を弓から離してしまい、矢は明後日の方向へと飛んでいく。
深々と刀の刺さった核から、ピシリとひび割れる音がした。
「ヤバッ!」
しかし時すでに遅し。
一気に収縮した核は溜め込んだエネルギーを放つように破裂した。
辺り一帯を血のように赤い雨が降り注ぐ。
当然、私もずぶ濡れだ。
「あーあ。
また怒られる……」
「ははははははっ。
倒してやったぞ!」
憂鬱なため息をつく私とは反対に、伶龍は勝ちどきを上げるかのごとく高らかに笑っていた。
「いったいいつになったら、満足に祓えるんですか」
「……すみません」
生きていれば私の母ほどの年の男性に叱責され、身を小さく縮み込ませる。
町はあれが破裂してまき散らした液体で、建物も道路も赤く染まっていた。
防護服を着た人々が浄水を撒いてそれを除染している。
「除染費用がいくらかかるかわかってるんですか」
「……すみません」
同じ言葉を繰り返し、ますます身を小さくした。
あれの核を切れるのは伶龍の刀だけ。
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