311人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
カウントダウンの時計、カチリ
カウントダウンの時計の音は、ずいぶん大きく、近くに聞こえてくるようになった。
カチリ、カチリという音に、追い立てられる。
もう終わりは、すぐそこまで来ている。
カチリ、カチリという音から、逃げるように、春馬は、大智に手を伸ばす。 会える日はいつだって、毎晩のように、大智の身体に手を絡める。
キスを強請って、腰をくねらせる。
わずかな時間でも、ほんの少しの間でも、大智と一緒に居たかった。
その体温を、感触を、刻み付けて、憶えておきたった。
もう、どのくらい泣いただろう。
身体中の水分は、なくなってしまったのではないかとおもうほど、泣いた。
泣いても、泣いても、まだ、涙が溢れた。
人間って奴は、不思議な生き物だ。
諦めようと、思えば、思うほど、諦めきれないし。
忘れてしまおうと、思えば、思うほど、鮮明に思い出す。
あんなに後悔したのに、また、愛してしまった。
なんて、愚かなんだろう。
春馬は、何もかも投げ出して、小さく蹲った。
最初のコメントを投稿しよう!