ジャンクジャンキー

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 時刻は23時手前。塾帰りのカナは、空っぽのおなかをさすりながら、帰路をたどる。 「おなか、すいた……」  言葉にするのと同時に、おなかの虫が情けなく鳴く。自分とおなかの音の情けなさに、涙がじんわり浮かび、情けなくなる。  カナの母は教育ママというやつで、もう高校生になるというのに、門限は17時半で、例外は塾帰りのみとなっている。おまけに外食禁止で、コンビニの買い食いすら許されておらず、お小遣いの使い道も、勉学に役立つもののみと決められている。  レシートを全部提出させるという徹底ぶりに、カナも友達もドン引きしている。  今は養ってもらっている身なので大人しく従うが、母の言いなりになるのは、いい大学に入って、卒業するまでだ。卒業したら両親と学校の連絡先しか登録させてもらえないスマホなど叩き壊して、家を出るつもりでいる。  そのため、お小遣いは必要最低限しか使っていない。全部貯金箱の中だ。  気軽に中を取り出せないタイプの貯金箱なので、母に貯金箱に入れた額を誤魔化して報告すれば、ある程度自由にお小遣いを使えるが、今はそれすらも我慢しているため、所持金はいつも数十円。  この数十円は、非常時に公衆電話で使うために持っておきなさいと言われたものだ。 「はやく出てって、こんな生活、終わらせてやるんだ……」  おなかをさすりながら、母を恨む。買い食いも許されていなければ、お金もない。これだけならまだ耐えられる。  だが、「夜に食べるのは頭にも体にも悪いから」と言って、塾がある日は夕飯が用意されていない。  せめて塾前になにか食べさせてくれればいいが、「間食は頭に悪いから」と言って、おにぎりひとつさえ許してもらえない。 「餓死しそう……。空腹のほうが体と頭に悪いって」  以前、空腹で勉強に集中出来ないと言ったことがあるが、「努力とやる気が足りない」と怒鳴られて終わってしまった。 「あー、おなかすいたー……」  言葉にしても意味など無いと分かっているが、不満を口にしないとやってられないのも事実で、誰も聞いていないであろうことをいいことに、カナは不満を垂れ流しながら歩いた。
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