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いちだんとひんやりとした冷気が、その場の四人を包み込む。
イハノは、様子を窺うために燭台を掲げる。
その部屋の内部が床も壁もすべて、氷に覆われていることがわかった。
とても小さな部屋だが、中央にはガラスの棺が見える。
「あれですね」
「そうだな」
「では、行きましょう」
イハノは、そう言って神妙な足取りで室へ入る。
その背後へ続くロイルは、ガラスの前へ立ち止まり自分の腕の中にいるクリララを静かにおろした。
「ロイル様、ありがとうございます」
「当たり前のことだ」
クリララは、嬉しそうにロイルと微笑みを交わしたあと、氷のようなガラスに手をつき屈み込んでそれを覗き込んだ。
中に眠っている女性が紛れもなく自分の母だと気づいたのか、クリララは瞠目している。
「……母様」
小さな呟きとともに溢れそうになる光るものを、クリララは必死に堪えている。
「確かに、クリララを大人にした感じで、そっくりだね」
「そうだな」
クリララの左隣にいるロイルも同じように感じて見ていて、自分の内に潜む記憶もともに脳裏へ過ぎらせていた。
肌はクリララの白蜜色と一緒、青ざめた唇に淡い微笑みを湛えている。
美貌を縁取っているのは、クリララと同じ白緑の髪。
ガラスにその女性と重なるように、涙ぐむクリララの顔も映っている。
閉じてしまった瞳の色までは、わからない。
目元や唇にあたりがクリララに似ているが、自分が幼い頃に出会った女性とはやはり違うことに、ロイルは気づいた。
前々から浄化に優れているマンテマ小王国に興味があったロイルは、反帝国の噂があったこともあり、イハノに反対されながらもケイルにも黙って極秘に偵察に来たことがある。
その時男たちに襲われていた一人の女性を助け、怪我していた彼女の傷を治癒魔術で治したあとのこと、ロイルは発作を起こした。
ギルディ帝国の直径として誕生した以上、その宿命とともに他とは違う濃厚な邪神の欠片を内に抱く。
その影響を抑制出来るのは心身が落ち着く二十歳を超えてからで、十代の幼いままだときっかけによっては溢れ出す穢れに耐えきれず発作を起こすことがある。
双子であるがゆえにケイルも同様だが、ロイルとは真逆で過度な武術において発作を起こすことが度々あった。
そのため魔術に優れているイハノはロイル、剣術の優れているオーラルはケイルについていた。
最初に出会ったクリララの幼姿、そして今もわずかながらも違い、あの時にロイルがめぐり会った艶姿とはとてもかけ離れている。
発作を止めてくれた光の鼓動、それは確かにクリララのものであり、王妃シルララにしてはすべて若すぎると、ロイル自身ずっと感じていた。
そのあとクリララが告白した初恋王子との口づけをきっかけに不意に成長してしまった話は真実であり、恋してしまったのは紛れもなくクリララであること。
ロイルは、如実に痛感していたーー。
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