LOST TASTE

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「ええっ!?きゃああ!」 いきなり畳の上にひっくり返ってしまった仙人さん。リスが飛び跳ね鹿が鳴き、カスミと熊は思わず顔を見合わせる。 念の為に胃腸薬程度は持ってきた、だがこれは救急車を呼ぶ事態かと焦ったものの。 「───んん!」 仙人さんはすぐにがばっと起き上がり、座布団に座り直すと、まるでキツツキの嘴の様に凄いスピードで、小皿と茶碗と口の間に箸を往復させ始めた。 おお、お見事。最早手の動きが見えない。 これも拳法の極意なのだろうか。 最後は電子ジャーの中の、しゃもじにくっついたご飯まで一粒残らず平らげて、再びばたんと畳の上に倒れ込む仙人氏。 そして呆気に取られて眺めていたカスミに、彼は目を閉じたまま言ったのだ。 「……し、死ぬかも……」 「!?」 「全部なくなった。もう食えないなんて。 俺、死ぬかも……」 め、面倒臭いなあもう!
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