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3 白いもふもふとおやつ時間(みかん紅茶とオレンジとチョコレートのムース)
白いモフモフは、二足歩行しているうさぎだった。鼻をヒクヒクと動かしている。
あまりの驚きに声も出せず、口をパクパクしている日和に店主の絹田が笑って説明した。
「驚かせてすまないね、この子は今日のうちの調理補助のうさぎさん」
説明を聞いても、意味が分からない。
白いモフモフの毛並みに黒いクリクリとした瞳。ピンとたった耳が可愛らしい。
隣にちょこんと座ったうさぎに苦笑しながら、絹田が立ち上がってうさぎのためのカップを取りに厨房に消えた。
言葉を話すのかと思ったが、うさぎは言葉を発しなかった。店主がカップとトレーを手に戻って来た。
そっとうさぎの前にカップをおく。
それからトレーに乗せたチョコレート色のプリンをそれぞれの前においた。
「これ、新作なんだ。オレンジとチョコレートのムース」
絹田の説明に、うさぎが一際鼻をスンスンと動かす。その動きに、思わず微笑んでしまう。
まぁるい手でうさぎが器用にティーカップにお茶を注いだ。
みかんの香りが一層強く漂った。
香りにつられて日和も自分のカップにトポトポとお茶を注ぐ。
そして優雅にカップを持ち上げると、お茶に口をつける。それから、チョコレートムースをスプーンで掬うと、モムモムと小さな口を動かして食べ始めた。
「にんじんがご飯じゃないんだ……」
思わず呟いた日和の言葉に、絹田が微笑んだ。
まだ、自分の眼の前で起こっていることが信じられずにいる。
不思議の国のアリスにでもなった気分だった。
「キミは……驚かないんだね。はらぺこ亭に」
絹田が穏やかに提案した。
「ねぇ、キミ。ここで、バイトしないかい?」
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